fig36はメカ全体における各作業の時間及び割合を示したものである。
メカとしての仕事で大半を占めているメカ製造・試験及びメカ詳細設計についてだが、作業時間を比べるとメカ製造・試験に関する時間の方が2倍以上とかなり大きな割合となっている。
これは、個別に設計、製造した部品を統合する際にうまくいかなかったために、何度かやり直したり設計段階へ戻った後に再度組み直す、といった作業が増えたからである。
また、いくつかの部品についてはソフトの機能試験に合わせて分解することがあったため、これも製造・試験の割合が大きくなった原因だと考えられる。
全体に関して
全体の製作は無事完成させることが出来たが、計画していた日程よりも大幅に遅れてしまった。これは設計に時間がかかり制作のフェーズまで移るのがかなり遅かったからであると考えられる。MIRS2101のメカの人数は二人で、野谷はCADでの設計を、渡辺はメカに関するドキュメント全てを担当した。初めは二人で設計をしていたが、それぞれの機構を別々で設計していると各パーツ―は上手く設計できるが、それをCAD上で統合するときに穴の位置やFusion360の仕様上の問題などで不具合が生じ、上手く統合することができないことがわかった。そこで、設計の構想などに関しては話し合いながらも、設計とドキュメントで二手に分かれることにした。しかし、1つの機構を設計するのに時間がかかってしまったことで、詳細設計にかなり時間がかかってしまった。しかし、自分たちの中ではこれが効率的な分担であったように考える。
また、二つ目の原因として、タブレットおよび、タブレットケースの作成にかなりの時間を費やしてしまったからであると考えられる。タブレットとケースに関しては、コードの配置や複雑な形状ということもあってFusionのCAD上で設計することはできず、ほとんどの部分が試作を繰り返して作ることになった。それによって、時間を多く費やすことになってしまった。これに関して、無理やりFusion上で設計を行わなくても、配置くらいならBlenderなどのアプリを使ってもう少し時間を削減することが出来たかもしれないと感じた。
そして各機構を統合するときのねじの取り付けのしにくさや、標準機と昇降部分を外したり取り付けたりする整備性が悪いことが三つ目の原因であると考えられる。そのため、メカの他のエレキ、ソフトなどのパートの人ともう少し構造について話し合っておけば良かったと感じた。
また、作業を進めるうえで、「それ言ったじゃん」ということが、メカ内でも各パート間でもあった。その行き違いが設計のし直しなどを招き、時間ロスを引き起こす原因にもなったので、ワークレコードや自分たちのメモに話し合った内容を記録しておき、もっと情報を共有するべきであったと考える。
野谷和生
自分はドキュメント整備は渡辺に任せることにし、CADの設計を担当したが、Fusion360を使うことが初めてだったり、そもそもロボット自体の設計が初めてだったりしたので、設計になれるまでに余分な時間を費やしてしまった。複数人で設計をすると個人の設計のノウハウやくせで上手く合わさらないという理由で二手に分担したため、設計に時間がかかってしまったのはすべて自分が原因であることは明確である。その原因として、自分は設計段階でどこまで妥協してよいのかわからず、できるだけリアルなものを作りたく、ワイヤーやねじ、ねじ切りなどすべてCADで描いたこで、それに時間がかかってしまった。
また、整備用のドアなどで、普通の引き戸で良いものを自分のこだわりで円形のスライド式のドアにした。そういった、メモリップに必要な最低限の要素以外の+αで、完成までに余計な時間を費やしてしまったことを反省した。
また、タブレット、タブレットケースについては設計製作を自分一人で行ったのっで完成時の達成感が大きかった。しかし、完成させること第一の目標としてきたため、整備性などを一部考慮することを忘れており、組み立てや分解に時間がかかることが多かったので、もう少し少ない部品で組み立てを行えるものを考慮すべきだったと感じた。
そして、もう一人のメカの渡辺がドキュメント全般と製作を担当してくれたことで、自分は設計及び製作に専念することが出来たので、機体が何とか間に合ったのはその存在がかなり大きかったと思う。予定よりは少し遅れてしまったが、メカに関しては一つも妥協する部分をつくらず、むしろ+αの要素を取り入れて完成させることが出来たので、最高のMIRS開発を行うことが出来たと感じている。
渡辺裕紀
私はドキュメントに専念しCADによる設計は野谷に主に任せたが、最終的にはこの構図は成功したのではないかと考える。
最初の頃は二人とも初めて3DCADを触ったために、共同で各部分を設計していたが、後半になって統合に関する設計を行う段階で役割を分けた。これは、前半では個々の機能が独立していたために設計しやすかったが、後半の統合において、複数人で設計を行おうとすると全体を見たときに齟齬が生じるためである。
代わりに私はドキュメントや部品の加工を担当したわけだが、ほぼドキュメントだけであったからこそ、設計に対して指摘がしやすかったとも思う。ドキュメント制作のために図面を作成する中で気づいたことや修正点を第三者的な目線で見ることができ、自然とチェック機能が作用していたと思う。
また、事前に野谷の設計をまとめておく、という仕事だったため、加工時に用いる寸法などを確実に把握でき、精度の求められる加工において十分要求に達する製作ができたと思う。
ただ、全体的にクオリティの高く、代わりに工程の多い設計思想な野谷と、簡素で組み立てやすいがクオリティが低くなる私の設計思想において衝突することがままあり、出来上がったMemoLipを見ると十分なクオリティを期間内に作り上げることができているため、そこについて考えが当時凝り固まっていたのは反省点である。
その他にも、前述のとおり私は基本的な加工を行った。これは穴あけや裁断などの組み立てに用いる部品を制作するものである。基本的な組み立ては野谷主導で行っていたが、特に昇降機構などは自分がつくったために精度が大変求められ緊張した。一番細かく測って作ったと自負しているが、つっかかりなく滑らかに昇降ができている点から見ても、成功と言えて満足している。
今回、もう一人のメカの野谷が設計と製作を担当してくれたことで、高いクオリティと妥協のない機能を搭載することが出来たので、機体が問題なく動作し、社会実装や発表会において評価を得られたのはその存在がかなり大きかったと思う。設計をドキュメント整備のために確認する中で、当初問題となっていた2人間の齟齬が解消されたために後半の設計をスムーズに終えることが出来、満足できるMIRS開発を行えたと思う。
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