1−7 ウェブレットの復元
私たちは、今まで離散ウェブレット変換を信号や画像を解析したり圧縮したりするのにどのように利用できるかについて
学んできた。ここまで流れのなかで残りの半分は、分解された成分をどのようにして情報損失のなしで本来の信号に
組み立てることができるかについて学んできた。この工程を復元(または合成)という。
合成をもたらすその数学的操作は、逆離散ウェブレット変換(IDWT、Inverse discrete wavelet transform)と呼ばれる。
ツールボックスで信号を合成するため、ウェブレット係数から信号を復元する。

ウェブレット解析はフィルタリングとダウンサンプリングを含む、そしてウェブレット復元プロセスは
フィルタリングとアップサンプリングからなる。
アップサンプリングは、サンプルの間にゼロを挿入することで、信号の構成要素を長くする過程である。

ウェブレットツールボックスには、idwt、waverecのようなコマンドが含まれている。
これらのコマンドは、一次元信号の構成要素を用いて、1段階もしくはmulti-level(多段階)の復元をそれぞれ遂行するものである。
同じように2次元信号のためにidwt2、waverec2が用意されている。
復元フィルタ
元の信号の完全な復元を得るのに重要であるフィルタの選択が復元プロセスそのものであるため、
復元プロセスのフィルタリング部分は、いくつかの議論を生み出す。
完全な復元が可能であることは、注目すべきことである。
分解の過程で行われた信号要素のダウンサンプリングによって「aliasing」と呼ばれるひずみが発生する。
分解と復元のためにフィルタを慎重に選ぶことによってフィルタリングが分解と復元密接に関係しており(しかし等しくはない)、
それ(フィルタを慎重に選ぶこと)によってaliasingの効果を打ち消せることが明らかになった。
このことは、Ingrid Daubechiesの研究により可能となった進展である。
これらのフィルタの設計方法の技術的な説明はStrangとNguyenによる
Wavelets and Filter Booksという本のp347を参考されたい。
ローパスとハイパス分解フィルタ(LとH)は(関連するそれらの復元フィルタ(L'とH')も同様に)
quadrature mirror filtersと呼ばれるシステムを形成する。

近似と詳細の復元
私たちは、近似と詳細の係数から元の信号を復元することが可能であることを明らかにしてきた。

また、信号の係数ベクトルから近似と詳細をその信号に復元することも可能である。
一つの例として、私たちは第1段階の係数ベクトルcA1から第1段階の近似A1をどのように復元するかについて
考えてみよう。
私たちは係数ベクトルcA1を同じ工程に通すことで元の信号を復元したりする。
しかし、それ(係数ベクトルcA1)を第1段階の詳細cD1と組み合わせるではなく、詳細の部分に0ベクトルを与える。

この工程は復元された近似A1を結果としてもたらす。それは本来の信号Sと同じ長さを持ち、Sの実際の近似でもある。
同様に、類似の工程を用いて第1段階の詳細D1を復元することができる。

復元された詳細と近似は、元の信号の本当(実際)の要素である。実際に、次のように
、それらを結合すれば、そのことがわかる。

ここで、係数ベクトルcA1、cD1に注意せよ。なぜならそれらはダウンサンプリングによって作られ、aliasingひずみを含み
元の信号の半分の長さしかない。そのため、信号を復元するために直接結合できないからである。
それらを結合する前に、近似と詳細を復元する必要がある。
multi-levelの解析の要素にこの技術を適用することで、
私たちはずべての復元された信号要素について類似関係を保つことがわかる。
それは、そこに元の信号を復元するいくつかの方法があることを意味する。

ウェブレットの形へのフィルタの関連性
p1-21の”復元フィルタ”のセクションで、私たちはフィルタを選択することの重要さについて述べた。
実際に、フィルタの選択は完全な復元が可能であるかどうかを決定するだけでなく、我々が解析に使用する
ウェブレットの形状も決定する。
また、いくつかの実用的なウェブレットユーティリティを構築するため、しばしば波形を描くことから始める。
その代わり、それは普通適切な方形ミラーフィルタをデザインすることにより意味を持ち、
波形を作るのにそれらを利用する。一つの例通して、これがどのように行われたかを見てみよう。
db2ウェブレットに対してローパス分解フィルタを考えよう。

このフィルタの係数はdbauxというコマンドより得ることができる。

もし、このベクトル(wrevを見よ)の順番を逆にし、偶数のサンプルに’-1’をかけると、ハイパスフィルタが得られる。

次に、要素の間にゼロを入れることによって、hprimeを2倍にアップサンプリング(dyadupを見よ)する。

最後に、元のローパスフィルタに、アップサンプリングのベクトルを巻き込む。

もし、この工程をさらに何回か繰り返すと四つの要素フィルタベクトルLprimeをもつ結果ベクトルを
反復的にアップサンプリングし、巻き込むことによって一つのパターンが表れ始める。

その曲線は次第にdb2ウェブレットのように見え始める。これは、復元フィルタの係数によって
ウェブレットの形状が完全に決まることを意味する。
この関係は重要な関わりをもつ。それは、すぐに形を選んだりそれをウェブレットと呼んだり、
解析を行ったりする事ができないことを意味する。少なくとも、もしあなたが元の信号を正確に復元することを望んでいるなら、
任意のウェブレットの波形を選ぶことはできない。
あなたは方形ミラー分解フィルタによって定められた形状のウェブレットを選ぶことになる。
スケーリング関数
私たちはウェブレットと方形ミラーフィルタの相互関係がわかった。
ウェブレット関数ψは、ウェブレット分解の詳細部分を生成するハイパスフィルタによって決定される。
そこにはいくつかのウェブレット(全てではない)に関連する付加関数がある。
これは、スケーリング関数と呼ばれる、φである。スケーリング関数はウェブレット関数に非常に似ている。
それはローパス方形分解フィルタによって決定され、よってウェブレット分解の近似に関連される。
同じように、反復的にアップサンプリングしハイパスフィルタをまきこむことは
ウェブレット関数に近似する形状を作り出し(p1-24のこと)、そして反復的にアップサンプリング
しローパスフィルタをまきこむことはスケーリング関数に近似する形状を作り出す。
多段階の分解と復元
多段階の分解ー合成工程は下図のように表すことができる。

このプロセスは三つの局面で構成される。
@ウェブレット係数を得るため信号を分解する。
Aウェブレットを修正する。
B係数から信号を組み合わせる。
これまで分解と復元について説明してきた。
もちろん、信号を分解してすぐに復元するだけで満足するためにこれをやっているわけではない。
得られた係数が知られてる多くの使い道を持っているから、我々はウェブレット解析を行う。
その使い道のなかで主要なものはノイズ除去と圧縮である。
しかし、ウェブレット解析はまだ新しい分野であり、ウェブレット係数の多くの使い道が残されていることは
疑う余地もない。ウェブレットツールボックスは可能な使い道とこれまで知られていないウェブレット解析の
応用を調査する手段にすることができる。ツールボックスの関数を調べれば、いろいろな発見があるだろう。
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