沼津高専 電子制御工学科
MIRS0703技術調査報告書
MIRS0703-TECH-0001
改訂記録
版数 作成日 作成者 承認 改訂内容
A01 2007.7.10 小林優作・中島・渡辺 中島 初版
A02 2007.7.20 中島 中島 3.ポスト探索用プロペラの項に説明文を追加


目次








1.本ドキュメントについて

このドキュメントは、MIRS0703に新規に導入するシステムについての技術調査結果である。


2.ポスト獲得用アームについて

MIRS0703は、MIRS標準機の旋回、前進する動作を省き、アームを伸ばすことによってポスト獲得する。
動力はDCモーターを用い、一定以上アームを伸ばさないよう、ストッパーを設ける。
MIRSとポストの間隔は正確にはわからないので、アームに柔軟性を持たせる。柔軟性を持たせることは、
MIRSの位置をずらさないことにも役立つ。アーム伸縮機構のfig1を以下に示す。






3.ポスト探索用プロペラについて

MIRS0703は、MIRS本体が旋回してポスト探索するのではなく、プロペラの先端に超音波センサをつけ
プロペラを回転させることによりポストを探索する。プロペラ駆動には、ステッピングモータで駆動、
ウォームギアで減速する。ウォームギアは、動軸から従軸には回転を伝えるが、従軸から動軸には回転を
伝えないという性質がある。プロペラを使用しないときに動かないようにできる。

同様のプロペラ機構を用いたシステムは、過去に多数あるが、すべて失敗に終わっている。
過去のグループを見る限り、プロペラの回転制御自体は行えているので、ハードウェア的な問題があると考えられる。
過去のグループのシステムでは超音波センサの位置が高すぎ、ポストの探索が正常に行えていないのではないかと判断し、
MIRS0703では、プロペラをL字型のフレームを用いることにより、超音波センサの位置が高すぎないないような工夫をする。
(プロペラの軸はMIRS上部に搭載するが、超音波センサの位置は通常取り付ける位置とさほど変わらないようになる。)
現時点で予想できる問題点は以上のみであるが、今後開発を行っていく上でさらに考察し、問題点を改善していく予定である。

プロペラ駆動機構の模式図をfig2に示す。






4.ステッピングモータについて

ステッピングモータはパルスモータとも呼ばれ、名前の通りパルス信号を与えることによって
決められたステップ単位で回転するモータのことである。
回転角度と回転速度が与えるパルス信号の回数と周期によって決定するため、定格負荷内であれば、
フィードバック制御なしで思った通りの動きをすることが可能である。
また、静止トルクが得られ、通電状態(励磁状態)で特定の端子に信号を与えっぱなしにすると
比較的大きな静止トルクが得られ、通電しない状態(無励磁状態)でも小さいながら静止トルクがある。
そして、パルスの供給を止めるとピタッとその場で正確に停止する。なので、正確な回転角度制御に適している。
また、分類としてはブラシレスモータに属するため、機械的な接触子がなくて長寿命である。



4.1.ステッピングモータの種類
ステッピングモータは主に2つの種類に分けられ、バイポーラ方とユニポーラ型に分けられるが、
普通、個人での工作等に用いられるものはユニポーラ形である。
MIRS0703でもユニポーラ形のステッピングモータを用いる。


4.2.ユニポーラ型ステッピングモータの使い方
ステッピングモータはインダクションモータやDCモータとは異なり、モータにただ単に電源を接続するだけでは回転しない。
モータを駆動する場合、回転速度や回転角度を決めるパルス発信機、巻線を流す電流を順次切り替える駆動回路(ドライバ)、
回路およびモータを駆動させる直流電源が必要になる。使い方について模式図をfig3に示す。




ステッピングモータはDCモータと違ってケース側に巻き線コイルがあり、これをステータと呼んでいる。
一方回転する方はロータと呼ばれている。ステータ側は[X]と[Xバー]によるコイルと、[Y]と[Yバー]によるコイルの
2つのコイルからなる。ユニポーラ型では、それぞれのコイルの中間点からタップが立っていて、そこから電源を供給して
[X]、[Xバー]、[Y]、[Yバー]に対して決まった順番に電流を流すことによってロータを回転させるための磁化を行う。
これを励磁(レイジ)と呼んでいる。
ユニポーラ型ステッピングモータでは、fig4のように6本のケーブルが出ている。






4.3.励磁の種類
ロータを回転させるための励磁の方法にはいくつかの種類がある。
いずれもパルス信号で+DC端子からその他の各端子(相)に対して電流を流す。
下の各タイミングチャートでは、パルスが出力されている状態(ハイ状態)にそれぞれの端子に対して電流が流れていることを示す。




4.3.1. 1−1相励磁
一番簡単な励磁方法で[X]→[Y]→[Xバー]→[Yバー]の順に電流を流していく。
逆の順番で電流を流せば逆転する。トルクが小さくあまり安定性が良くなく、実用ではほとんど利用されていない。
1−1相励磁の模式図をfig5に示す


4.3.2. 2−2相励磁
各相のパルス幅が1−1相励磁の2倍の幅となり、次の相と1パルス分ずつずらしながら同時に励磁する方法。
1−1相励磁と同様に、[X]→[Y]→[Xバー]→[Yバー]の順で正転、その逆の順で逆転する。
1−1相励磁に比べて回転が安定し、高いトルクが得られるので良く利用されるが、消費電力は2倍必要である。
2−2相励磁の模式図をfig6に示す







4.3.3. 1−2相励磁
各相のパルス幅を3とし、次の相とは2パルス分だけずらして励磁していく方法。
1−1相励磁と2−2相励磁を交互に繰り返しているのと同じ状態である。
この励磁方法は1パルス幅ごとに回転する角度が1−1相励磁と2−2相励磁に比べて半分になる
という特徴(ハーフステップ動作)がある。
2−2相励磁の模式図をfig7に示す







4.4.ステッピングモータを用いる利点
回転角制御が可能なため、ロータリエンコーダを用いてフィードバック機構を作る必要がない。





5.ソフトウェアについて

各システムごとによるソフトウェアの詳細を記載する。

5.1.ポスト間直接移動
ポスト間の移動を無駄なく行うために、ポスト間直接移動法を取り入れる。
過去のグループ、MIRS0403とMIRS0604 がこの方法を取り入れているので参考にする。(参考文献についてはまとめて後述する)


(1)int post_to_post2(int target_post, int next_post_no)

二つのポスト間を直接移動する関数。引数target_postとnext_post_noで、
現在のポスト番号(P1とする)と次に接近するポスト番号(P2とする)を与える。

この関数は post_get()終了後のP1周回開始点から始まる。
アルゴリズムとして、フィールド中心点と二つのポストの中心点を結ぶ三角形を考える。

まずP1とP2の座標から、P1の中心点とP2の中心点を結ぶ直線aの長さを余弦定理により求める。
求めた直線aの長さと、フィールド中心点から見たP1とP2の間の角度A、およびフィールド中心点からP2の中心点までの距離bから、
正弦定理を応用して、P1の中心点とフィールド中心点を結ぶ直線cと直線aのなす角度Bを求める。

求めた角度BだけP1の周回を移動することにより、P1とP2を結ぶ直線a上まで移動することができる。
その後、直線aの長さとプロペラの超音波センサの値を比較し、誤差が大きければポスト周回軌道上を前後に移動して補正を行う。
補正終了後、90度回転しさらにプロペラの超音波センサで補正を行う。
この時、超音波で読み取った値を、P1とP2間の距離として改めて保存する。
保存されたポスト間の距離をもとに、P2の手前30cmまで移動し正対補正を行い、その上でP2の周回開始点まで移動する。

計算方法をfig8に示す







(2)fig9のような三角形を考える。×はMIRSがその場回転してポストを探索する基準点である。

ここで注意するのは、『BはMIRSの基準点での超音波探索によって測定された値ではない。』ということだ。
超音波センサで測定された値は、基準点からポスト中心までではなく、
MIRS前方の超音波センサの計測開始点(※1)からポスト側面までの距離である。
したがって、基準点からP1,P2までの超音波センサでの測定値をそれぞれr1,r2とすると、

  A = r1
  B = r2 +(MIRSの中心〜超音波センサの計測開始点までの長さ)+(ポストの半径)

である。導出式自体は変わらないので、その式に基づいて計算すれば、
ポスト間の直接移動に必要なポスト間の距離・角度が得られる。

(※1)超音波センサの計測開始点
  データシートによると、超音波センサの先端ではなく、だいたい中間ほどである。

計算方法をfig9に示す







5.2.プロペラ制御
今回プロペラに取り付ける超音波センサは1つだけであり、MIRSのシャーシから幾分かはみ出している。
従って、MIRSの状況に応じて超音波センサの位置を変える必要がある。

次に各状況に応じた、プロペラの動き(超音波センサを基準に考えた)を記す。

1.競技場中心でのポスト探索

  MIRS本体はその場から動かず、プロペラを1周、逆周りに1周を繰り返す。
  同じ方向に回転を繰り返すと、コードが絡まるなどの問題があるためである。


2.ポスト接近&周回時

  右に移動させ、ポストに対する正対補正と周回の邪魔にならないようにする。


3.ポスト間直接移動時

  「ポスト間直接移動」で記したように、ポスト周回時は右に90度回転した後は前に移動させる。
  その後、次のポストに移動するまで前方で固定し、ポスト手前30cmまで移動して正対補正を行う。


「2.ポスト接近&周回時」と「3.ポスト間直接移動時」を繰り返し、
プロペラがMIRSの動作に支障を来たさずに機能するようにする。


5.3.アーム制御
MIRS0703では、機体左側に取り付けたアームによりポストを獲得する。

ポスト獲得のプログラムは、赤外線コードによりポスト番号を記憶した後に走らせる。
アームはモーターの回転のみの制御なので、プログラムは簡単に組みあがる。




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