N64に絞り込めない任天堂の苦悩


 発売以降様々な報道を受けてきた任天堂、N64だが、当の任天堂はN64の短期的な動向にはあまり興味がないようだ。任天堂は、1997年年末までが第一ラウンドといっている。今年は64DDも発売予定で、これによって「書き込める機能を生かした新しいゲームの面白さ」を提供するともいっている。任天堂はN64で掲げた「質的転換」の実現のために、ソフトが少ないという批判を受けながらも、高い志を貫きとうしている。
 任天堂が苦しんでいるのは、実はこういった批判ではないように思える。実のところ、ミニ四駆、カラオケ、NCなどの家庭をターゲットにしている他のメディアによせる、子供や一般層の関心ではないだろうか。N64のライバルは,PS、SSではないのだ。ゲーム離れを起こしはじめている小学生、中学生、一般層などを市場に引き止めることこそが、N64の使命なのである。
 もちろん、SS,PSも低年齢層や一般層へのアピールを怠ってはいない。しかし、両者とも十分な成果は挙げていない。どちらも、固定ユーザーをメインとした市場にとどまっている。
 もちろん、PSは高校生、大学生、社会人などの高い年齢層の一般ユーザーは獲得した。これには、大きな評価を与えてよいと思うし、評価もしている。ゲームが一般に浸透したと感じさせてもくれたしね。
 しかしこういう人たちは、自分でゲームを買える人々なのだ。高校生にもなれば、バイトもするし、社会人であれば、一定の収入がある。ゲーム機は決して安い娯楽品ではないが、こういった人たちが買えない値段ではない。また、年齢が高くなればなるほど、遊びの選択肢は多くなる。だからこそ、低年齢層の吸収というのは、非常に重要な問題ではなかろうか。だからこそ、私はN64に期待しているのだ。
 しかし当の任天堂はある悩みを持っている。他の単品経営のメーカーとは違い、任天堂はN64、SFC、ゲームボーイ、サテラビューとそれぞれ役割の異なったハードをたくさん抱えている。N64で「質的転換」をはかる一方で、SFCで遊んでいる多くのファミリー層、塾の帰りにゲームボーイで遊んでいる小学生、N64で新たなゲームを楽しんでいるユーザーそれぞれに、面白いソフトを供給しなければならない。N64に開発を集中させたくてもなかなかそうは出来ないのだ。
 N64がこれから伸びても、他のハードの役目が変わるわけではない。任天堂にとっての最大の悩みは、限りある開発力をどのように分配し、割り当てるか、これが最大の問題であるように思う。