ディスクシステム再考



 「ディスクシステム」をご存知でしょうか?「ディスクシステム」とは、1986年2月に発売されました。「ファミコン」と合体させ、記憶媒体としては磁気ディスクを用いました。ROMカートリッジと比べて、ソフトの値段も安く、さらに店頭の端末機で500円でゲームの書き換えができるという画期的なシステムでした。『ゼルダの伝説』『新鬼が島』『ファミコン探偵クラブ』『中山美穂のときめきハイスクール』などの名作も生まれました。最近よく言われる『マルチメディアキオスク』とは、ゲームの世界では、1986年にすでにあったのです。
 しかしながら、結果は失敗に終わりました。その要因は、ディスクの信頼性にかけたこと、違法コピーが多かったこと、500円での書き換えサービスということでソフトハウスも小売店も利益が少なく本腰を入れにくかったこと、などが挙げられます。要するに当時は、開発環境がまだ整っていなかったのです。
 つまり『コンセプトは正しいが、時期が早かった』のです。こういった事は、珍しいものではありませんよね?
 しかしながら、一度駄目だったから、また駄目だということにはなりません。新しい技術とともに、多少形を変えて登場し、成功するというのは、これまたよくあることです。技術が違う、環境が違う、消費者の対応が違う、流通が違うということでディスクシステムが蘇る可能性は大いにあるのです。
 1997年中に、任天堂は64DDを発売する予定です。最終的には、64DDがディスクシステムのようなマルチメディアキオスクになるものと思われます。ところが、1996年11月にこんな発表がありました。SFCソフトを書き換え可能なカセットを用いて、店頭で1000円〜4000円で書き換えるというものです。詳しくはを見てください。これまたマルチメディアキオスクです。任天堂は、明らかにノンパッケージ流通を目指しているようです。
 任天堂はディスクシステムでの失敗の原因をつぶさに検証しているはずです。しかも書き換えの拠点を、ユーザーの最も側にあるコンビニにしたのも大きな成功要因となりそうです。町の情報拠点であるコンビニは、書き換えメディアとは大変相性が良いと思うからです。また、ディスクシステムの失敗が記憶に新しい小売店の中には、もう嫌だと思う店もあるでしょう。そこで、パッケージでは小売店を中心に、書き換え(ノンパッケージ流通)ではコンビニを中心として展開する。こんな、既存の流通との棲み分けを図りながら、ノンパッケージを指向する任天堂に王者の底力を感じます。ぜひとも、成功して欲しいものです。