卒業研究
ファジィ制御を用いた交通信号システムの開発


  1. はじめに
  2. 近年、自動車の数の増加による道路交通の過密化が進み、交通渋滞が 社会問題となっている。そこでこのような渋滞問題の解決のために、 ファジィ制御を用いた新しい信号システムの研究を行っている。

  3. ファジィ制御とは
  4. ファジィとは「あいまいさ」という意味でファジィ理論とはコンピュータに 人間が得意とする「あいまいさ」を扱わせるための手法である。 現在、エアコン、洗濯機などさまざまな分野でファジィ制御が用いられている。 実際、交通システムは複雑なものでありそのシステム特性を全て捕らえるこ とは難しい。システム特性とは例えば、
    車の走るスピード
    車の数、大きさ
    交通事故、スピードオーバーする車
    歩行者
    などがあげられる。ファジィを用いることによってシステム特性を厳密に捕 らえることなく、「こうなったらこうする」といった簡単なルールだけでシ ステムを制御できる。

  5. ファジィ制御の簡単な例
  6. 次にファジィ制御の例を示す。 まず、ルールを与える。
    ルール 青信号のスプリットを
    1.交通量が多く、占有率が大きければ 長くする
    2.交通量が多く、占有率が小さければ そのまま
    3.交通量が少なく、占有率が大きければ 長くする
    2.交通量が少なく、占有率が小さければ 短くする

    占有率=車長/(車長+車間)
    スプリット:1サイクルのうち青信号、赤信号、黄信号などに 割り当てられる時間配分


    最も基礎的なファジィルールを考えた時、メンバーシップ関数は次のようになる。

    図1 前件部、占有率に関するメンバーシップ関数

    図2 前件部、交通量に関するメンバーシップ関数

    図2 後件部、スプリットに関するメンバーシップ関数
    表のルールにしたがってスプリットの変化量を決める手順を以下に示す。 交通量がa、占有率がbのとき、ルール1による処理は、「交通量が多い」の メンバーシップ関数より、その値は0.1となり、また「占有率が大きい」の メンバーシップ関数より、0.5が得られる。このルールでは小さい方の値をとる ので、このルールでの適合度は0.1となる。つまり占有率は大きいが(適合度1.0)、 交通量は多いとはあまりいえないので(適合度0.1)、後件部「スプリットを長くする」 の適合度は0.1になる。ルール2、3、4とも同じように考えるとそれぞれ、0.1、 0.5、0.5を得る。
    全てのルールにより得られた適合度の結果を今度は大きい方の値をとることにより、 後件部は次図のようになる。

    図4 結合結果
    図4において色つき部分の重心垂線に対する足の値が制御値となる。すなわち、交通量は 交差する車線より少ないが、ほどよく車が流れているのでこのままの状態を維持する。
    もちろんこのままでは完璧な制御とは程遠く、実際にはもっと多くのルール、要素を使う事で 最適な制御ができる。