沼津高専 電子制御工学科
MIRS9805基本設計書
MIRS9805-DSGN-0002
 
改訂記録
版数 作成日 作成者 承認 改訂内容
A01 1999.01.29 江本 江本 初版
A02 1999.02.08 江本 江本 2版(各部書き直し及び図を新しくした)
A03 1999.02.10 江本 江本 3版(保守交換単位、タスク構成の修正)
A04 1999.02.18 江本 江本 4版(保守交換単位の修正)

目次

  1. はじめに
  2. システム概要
  3. 諸元
    1.  
    2. 外観
    3. 機能性能
  4. システムの動作規定
  5. ハードウェア構成
    1. システム構成ツリー
    2. エレクトロニクス回路構成/機能
    3. エレクトロニクス回路基板外形
    4. 保守交換単位
    5. ソフトウェアビジビリティ
  6. ソフトウェア構成
    1. 動作モード
    2. リアルタイムモニタ
    3. タスク構成/機能
    4. マンマシンインターフェイス
    5. 試験機能
  7. システム試験
    1. システム試験概要
    2. 試験内容


  1. はじめに

  2. 本仕様書はMIRS98競技規定に基づきMIRS9805チームの作成する自立型小型知能ロボットの基本仕様を記述する。
  3. システム概要
  4. ハードウェア

    MIRS9805システムのハードウェアは標準MIRSに準ずる構成を有するが、MIRS9805固有の機能を実現するためにいくつかの変更点がある。以下、標準MIRSと異なる点のみ述べる。

    ソフトウェア

    ソフトウェアは複数のイベントドリブン型のタスクからなり、割り込みおよびタスクの管理はリアルタイムモニタMIRX68Kを用いて実現する。

    システムの動作

    MIRS9805システムは、一回目の競技時にあらかじめ定められたルート(図2参照)に従って競技場を周り、ポストの存在位置のマップを作成しながらスイッチを押していく。2回目の競技では、開始時に1回目の競技で得たマップ情報をもとに軌道を決定、軌道をトレースしながらポストを獲得する。

  5. 諸元
    1.  
    2. 外観

    3. 図1に本システムの外観を示す。

      図1.MIRS9805外観図
       (Tgif format,PostScript)
       
    4. 機能性能
  6. システムの動作規定

  7. MIRS9805システムは、一回目の競技時にあらかじめ定められたルートに従い競技場を周る。その間、超音波測距センサで自機から離れた位置のポスト、タッチセンサでルート上のポストの発見を行う。両センサが壁以外に反応したとをポスト発見とする。ポストを発見の後、ポストが自機から離れているならばそれに近づく。近づくときは前面の超音波センサで目標のポストを捕らえながら近づく。ポストに接触した状態になった後、ポストに対して自機が垂直に向くように向きを変える。向きを直すには、いったん後退して前面の超音波センサでポストを捉えるよう向きを変え、もう一度ポストに衝突したときに前面のタッチセンサのみがポストに触れている状態にする。ポストに垂直になった後、ポストの周りをロータリエンコーダの値を頼りに一定の間隔を置いて回る。その間、ポスト側の赤外線センサが赤外線に反応したらそこにスイッチがあるとみなし、自機の向きををポストに向けて前進。タッチセンサが反応し、赤外線が消えたらポストを獲得したとみなす。そして、ポストの位置とスイッチの位置をマップに保存した後にルートへの復帰を行う。タッチセンサでポストを発見した時に、そのポストがすでに獲得済みであるなら回避行動を取る。回避行動は、回避したいポストをよけるようにルートを一部修正することで行う。ルートの修正は、ルートの進行方向に対して垂直の向きにルートの一部をスライドさせる。
    2回目の競技では、開始時に1回目の競技で作成したマップをもとに、スイッチの取り付け位置も考慮した最短軌道を計算し、その軌道に沿って移動しながらポストを獲得する。軌道のトレースは基本的にロータリエンコーダを使って自己位置を確認しながら行う。そのため、自己位置のずれを生ずる前進後退の切り替えや壁やポストとの接触が極力少なくなるように軌道を決定する。また、ポストのスイッチ押下時にタイヤの滑りが少なくなるように、できるだけ軟らかくスイッチを押すように制御する。スイッチの押し方に関して、タッチセンサが反応してしまった時は軌道ミスとして一回目と同様にして獲得。赤外線センサが目的の赤外線に反応したときは前面の赤外線センサで目的の赤外線を捕らえながらポストへ近づいていく。タッチセンサがポストとの接触を感知し赤外線センサで赤外線の消灯を確認したらポストを獲得したとする。ポスト獲得後、残りのポスト獲得に向かう。

    図2 ルート概要図


  8.  ハードウェア
    1.  
    2. システム構成ツリー 下記にシステムの構成を示す。

    3. エレクトロニクス回路構成/機能

    4. 図3.MIRS9805エレクトロニクス回路ブロック

      各部の機能

      1. MPU部

      2. CPU:68k, RAM:512kb, system clock : 16MHz,RTC 等 の機能を持つ。
      3. 汎用入出力制御(PIT)部 (IP-Dig.48 Board)

      4. 各センサとの入出力の制御と、24bitカウンタの機能を持つ。
      5. ロータリエンコーダ制御部

      6. モータの回転数を測定。また、タッチセンサの信号処理も行う。
      7. PWM回路部 (I/O sub,MPC)

      8. この回路は、モータを制御する信号であるPWM信号を作り出し、方向データと共に出力する回路である
      9. 赤外線センサ部

      10. 赤外線センサ回路、赤外線センサ周辺回路からなり、競技場内の円柱に取り付けられたLEDから発せられる赤外線を感知する。
      11. 超音波センサ部

      12. 発信機と、受信機からなり超音波が発信機から出て壁や、円柱等に当たって反射波となった波を受信機で受ける。
      13. タッチセン部

      14. 障害物との衝突をマイクロスイッチにより検出。信号をロータリエンコーダ制御回路に送る。
      15. I/Oボード部

      16. インプット/アウトプット、メモリ、割り込みの働きを持つ。ボード上でのバッテリーによるバックアップが可能である。
      17. I/Osubボード部

      18. I/Osubボードは超音波センサ回路、PWM回路、赤外線センサ回路を搭載したボードである。
      19. マンマシンインターフェース部

      20. ソフトウェアから自由に表示内容を設定できる4桁の7segLEDを有する。4bitのロータリDIPスイッチと押しボタンスイッチを一つ有する。スイッチの状態はソフトウェアから読むことができる。また、押しボタンスイッチの押下時ソフトウェアに対し割り込みを発生することができる。また、赤と緑のLEDを1つずつ持つ。
      21. 緊急停止装置部

      22. MIRSを緊急停止させるスイッチをもつ。モータ駆動のための電源スイッチを切ることで緊急停止させる。
      23. PD(電源制御部)

      24. 各部回路、駆動系への電力の供給を行う。ロック式の回路電源スイッチと、ノンロック式の駆動系電源スイッチを持つ。
    5. エレクトロニクス回路基板外形
      1. 下記についてはVMEハーフハイト基板仕様に従う。
        • CPUボード(VSBC1)
        • IOボード(VIPC310)
        • IOSubボード
        • マンマシンインタフェースボード
      2. 下記についてはIOボード(VIPC310)インダストリパック仕様に従う。
        • IPボード(IPDigital48)
        • ロータリエンコーダボード
      3. 下記については標準MIRS基板を使用するのでMIRSデータベースを参照すること。
      4. 緊急停止装置

      5. 標準MIRSの勝敗判定装置をベースにして作成。赤外線ランプの回路を無くし、停止装置としてのみの機能を残す。
    6. 保守交換単位

    7. 以下に保守交換単位を示す。
           
    8. ソフトウェアビジビリティ 本システムのソフトウェアビジビリティは標準MIRSソフトウェアビジビリティ(現在作成中)の仕様と同一である。但し、各センサの位置とIOポートアドレスの対応は下表による。(超音波センサに関しては番号(選択信号2bit)のみ)
    9. センサ IO port Address/bit 備考
      超音波センサ
      (選択信号)
      (下位2bit) 
      2 (10)
      3 (11)
      0 (00)
      1 (01)
      赤外線センサ 右後 0xfc6153/7
      右中 0xfc6153/6
      右前 0xfc6153/5
      左後 0xfc6153/4
      左中 0xfc6153/3
      左前 0xfc6153/2
      前右 0xfc6153/1
      前左 0xfc6153/0
      タッチセンサ 0xfc6003/4
      0xfc6003/5
      バンパタッチセンサ 0xfc6003/6
  9. ソフトウェア
    1. 動作モード

    2. 図4.状態遷移図
      (Tgif Format,PostScript)


      状態遷移表
      次の状態/現在の状態 初期状態 ルート移動状態 トレース移動状態 回避状態 接近状態 スイッチを押す状態 獲得態状 復帰状態 スイッチを探す状態(2回目) 獲得状態(2回目)
      初期状態 1回目(DIPSW=0)
      /ー
      2回目(DIPSW=1)
      /ー
      ルート移動状態 リセットSW押下
      /ー
      タッチセンサで既に獲得したポストを発見した。
      /ー
      超音波検出有りかつポスト獲得していない
      /現在位置保存
      タッチセンサ検出有りかつポスト獲得していない
      /現在位置保存
      トレース移動状態 リセットSW押下
      /ー
      タッチセンサ検出有りかつポスト獲得していない
      /ー
      赤外線センサ検出有り
      /ー
      回避状態 リセットSW押下
      /ー
      回避終了(一回目)
      /ー
      接近状態 リセットSW押下
      /ー
      タッチセンサ検出有り
      /現在位置保存
      見失った
      /ー
      スイッチを探す状態 リセットSW押下
      /ー
      スイッチをみつけた(赤外線感知)
      /ー
      どうしても見つからない
      /ー
      獲得態状 リセットSW押下
      /ー
      ポストを獲得した(赤外線消灯)
      /ポスト、スイッチ位置を保存
      復帰状態 リセットSW押下
      /ー
      元の位置に戻った
      /ー
      スイッチを探す状態(2回目) リセットSW押下
      /ー
      スイッチを発見した
      /ー
      獲得状態(2回目) リセットSW押下
      /ー
      ポストを獲得した
      /ポスト位置保存

      状態の定義

      1. 初期状態:電源投入、システムリセットの最初の状態。
        • 1回目(DIPSW=0)ならばルート移動状態に遷移する。
        • 2回目(DIPSW=1)ならばトレース移動状態に遷移する。
      2. ルート移動状態:ルート上を移動しつつ超音波センサとタッチセンサによりポストの探索を行い、ロータリエンコーダ・超音波センサを用い常に自分の位置を修正する。
        • リセットSW押下時、初期状態に遷移する。
        • タッチセンサで既に獲得したポストを発見したら回避状態に遷移する。
        • 超音波検出有りかつポスト獲得していないかつポスト近いとき時、接近状態に遷移する。
        • タッチセンサ検出有りかつポスト獲得していない時、スイッチを押す状態に遷移する。
      3. トレース状態:一回目で記憶したポストの座標をもとに、センサを使う必要のない範囲内で移動速度を上げることにより時間の短縮を 図る。また、移動は最短距離を通る。
        • リセットSW押下時、初期状態に遷移する。
        • タッチセンサ検出有りかつポスト獲得していない時、スイッチを探す状態に遷移する。
        • 赤外線センサ検出有りの時、獲得状態に遷移する。
      4. 回避状態:発見したポストがすでに獲得済みのため、そのポストをよけながら他のポストを探す。
        • リセットSW押下時、初期状態に遷移する。
        • 回避終了の時、ルート 移動状態に遷移する。
      5. 接近状態:超音波で発見した離れたところに存在するポストを獲得するため、そこまで移動する。
        • リセットSW押下時、初期状態に遷移する。
        • タッチセンサ検出有りの時、スイッチを押す状態に遷移する。
        • 見失った場合、復帰状態に遷移する。
      6. スイッチを押す状態:赤外線でスイッチを位置を探す。
        • リセットSW押下時、初期状態に遷移する。
        • スイッチをみつけた(赤外線検出)時、獲得態状に遷移する。
        • どうしても見つからない場合、復帰状態に遷移する。
      7. 獲得状態:ポストのスイッチを押してポストを獲得する。
        • リセットSW押下時、初期状態に遷移する。
        • ポストを獲得した(赤外線消灯)時、復帰状態に遷移する。
      8. 復帰状態:移動ルート上への復帰移動を行う。
        • リセットSW押下時、初期状態に遷移する。
        • 元の位置に戻った時、ルート移動状態に遷移する。
      9. スイッチを押す状態(2回目):記憶したポスト位置まで移動してスイッチの位置を探す。
        • リセットSW押下時、初期状態に遷移する。
        • スイッチを発見した(赤外線検出)時、獲得状態(2回目)に遷移する。
      10. 獲得状態(2回目):記憶したスイッチの位置を押す。
        • リセットSW押下時、初期状態に遷移する。
        • ポストを獲得した(赤外線消灯)時、トレース移動に遷移する。
    3. リアルタイムモニタ

    4. MIRS用に開発されたMIRX68Kを使用する。
      MIRX68K user's manual(現在作成中)
    5. タスク構成/機能

    6. 図5.タスク構成図
      (Tgif Format,PostScript)


      1. 低レベルタスク :主に、高レベルタスクからハードウェアのコントロールのために起動される。
        • task00:マンマシンインタフェースタスク

        • BB(タスク間情報の受け渡しに用いる掲示板)に書かれているセンサ情報やシステムの状態をLEDに表示する。またDIPスイッチの状態をBBにに書き込む。このタスクはタイマにより一定時間ごとに起動される。  
        •  task01:超音波センサタスク

        • 4つの超音波を順に動作させ距離情報をBBに書き込む。このタスクは電源投入時に起動され、常時測定を行っている。超音波発信したのち、タスクは開放され割り込み待ちになる。
          注)超音波受信もしくはタイムアウトにより再起動され距離を計算する。したがって常時計測を行っていてもこのタスクがCPUを占有することはない。
        • task02:自己位置検出タスク

        • 一定時間ごとに起動され、ロータリエンコーダの値から自己位置のx、y座標と姿勢角をBBに書き込む。
        • task03:赤外線センサタスク

        • 赤外線センサ割り込みが入るごとに、センサ状態を読み取りBBに書き込む。
        • task04:PWMモータ駆動タスク

        • タスク起動時に受け渡される引数によって指定される左右車輪の速度データをPWM回路に書き込む。
      2. 高レベルタスク
        • task06:自己位置修正タスク

        • 自己位置をルート情報と照らし合わせ、自己位置の修正を行う。このタスクは、軌道トレースタスクにより定期的に起動される。
        • task07:回避タスク

        • 回避のためのルート修正を行う。このタスクは、軌道トレースタスクにより起動される。起動タイミングは、タッチセンサがすでに獲得済みのポストに反応したとき。
        • task08:軌道トレースタスク

        • 前もって記録させておいたルートをエンコーダの値や超音波センサを使いトレースする。このタスクはメインタスクから起動される。各種高レベルタスクの起動を行う。
        • task09:試験走行タスク

        • 試験走行用のタスク。各種試験を行うもの。試験内容はシステム試験仕様書による。このタスクはメインタスクから起動される。
        • task10:位置復帰タスク

        • ポスト獲得後に元のルートにエンコーダの値や超音波センサを使い定められたルートまで戻る。このタスクはポスト獲得のための行動終了後、元のルートへ戻るときに起動トレースタスクにより起動される。  
        • task11:ポスト獲得タスク

        • 自分の向きをポストに垂直にし、その後90度回転する。エンコーダ値を使いポールの周りを回転しつつ、赤外線センサでスイッチの位置を確認する。スイッチ発見後90度回転して前進してポストに当たる。超音波で発見した離れた位置にあるポストを獲得するために、そのポストまで近づく動作も行う。このタスクは、軌道トレースタスクからポスト獲得を行うときに呼び出される。
      3. メインタスク
        •  
        • task05:行動計画タスク

        • mirs本体の行動を決定する。一回目の競技では、開始時にルート情報を修正保存を行う。二回目で使用する軌道の決定を行う。状態遷移図(表)のとおりに動作させる。
    7. マンマシンインターフェース

    8. マンマシンインタフェースとして以下の機能を具備すること。
    9. 試験機能

    10. 下記の試験機能を有する。
  10. システム試験
    1. システム試験概要

    2. システム試験はシステムの組立が完了した段階で、基本設計書の内容に適合しているかどうかを試験する。システム試験を実施する際には、各サブシステムで規定されるサブシステム試験に合格していなければならない。 試験は以下の項目について行われる。
    3. 試験内容

    4. 下記仕様書による。
      MIR9805システム試験仕様書
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