名称 MIRS2401 開発完了報告書
番号 MIRS2401-REPT-0002

版数 最終更新日 作成 承認 改訂記事
A02 2025. 2. 14 渡辺尊 青木先生 DRで指摘された点を修正

目次

1.ドキュメント概要

本ドキュメントは、MIRS2401の開発完了報告書である.

2.機体

製作した機体をfig.1からfig.3に示す.


fig.1 機体正面図

fig.2 機体背面図

fig.3.機体上面図

3.発表会・展示会の振り返り

MIRS2024新作ロボット発表会での結果は以下のとおりである.

投票結果

table1 投票結果

得票数 得票率 順位
MIRS2401
GAPLESS
18 9%
5
MIRS2402
KBin
29 14%
3
MIRS2403
華蟻
86 41%
1
MIRS2404
AQUA
24 12%
4
MIRS2405
GULLC
53 25%
2

技術評価

table2 技術評価

コンセプト 機能 社会実験 ニーズ 実現度 合計 順位
MIRS2401
GAPLESS
76.7% 66.7% 80% 66.7% 76.7% 73.3%
2
MIRS2402
KBin
73.3% 66.7% 63.3% 66.7% 70% 68%
5
MIRS2403
華蟻
86.7% 93.3% 80% 80% 90% 86%
1
MIRS2404
AQUA
73.3% 80% 73.3% 66.7% 66.7% 72%
3
MIRS2405
GULLC
70% 70% 70% 66.7% 70% 69.3%
4

結果として,GAPLESSは発表会で他の班と比較して評価されなかったといえる. その原因として,発表会の来場者はGAPLESSの本来の対象者である学校を知らない見学者ではないことが挙げられる. 特に,GAPLESSの革新的なポイントであるマッチングについては既に機を逃し,その良さが立場上良く伝わらなかったと考えられる. また,概観的な面でも,メカでの尖った部分が本来昇降機構などであるはずだったのが無くなり,目立っているのがその外装だけとなってしまったというのも大きいと思われる. 一方で,技術的な評価においては,コンセプトや実現度で他の班と遜色ない評価が得られている. 特に,社会実験の面での評価が高く,ロボットが社会実装されたときの働きについて, コンセプトの「ギャップをなくす」ことへの期待が持たれていることが示唆される.

社会実験をするにあたっては,「ギャップをなくす」ことが期待されていることを念頭におきつつ実験に臨みたいと思う.(→社会実装実験報告

発表会の総括として,発表会の来場者による投票と教員による評価(システム提案含む)の違いに着目すると,特に教員からは「ギャップをなくす」というコンセプトについて評価されたのに対して, 発表会ではこれに対する実現度の不透明さがあのような評価につながったと考えられる. さらに言えば,この実現度の程度に関わらず,そのコンセプトをさらに明瞭に伝えるべきであったというのが発表会においての反省点であるように思われる.


4.プロジェクトマネジメント分析

4-1.開発スケジュール(工数)

開発スケジュールについて,計画と実際の作業工数をtable3,table4に示す.


table3 計画の作業工程

Your browser does not support PDF files. Download the file instead


table4 実際の作業工程

Your browser does not support PDF files. Download the file instead


4-2.作業時間

個人の作業時間

個人別の作業時間のグラフを以下のfig.4からfig.11に示す.このグラフの単位は[時間]である.また,凡例をfig.12に示す.

また,個人別の作業時間を比較したグラフをfig.13に示す.


fig.4 松嶋昂平

fig.5 前田航月

fig.6 武井勇真


fig.7 外山英次郎


fig.8 中島蒼葉


fig.9 羽田心礼


fig.10 室伏準

fig.11 渡辺尊


fig.12 凡例


fig.13 工数の比較

班の作業時間

班の合計の作業時間をfig.14に示す.


fig.14 班合計作業時間

4-3.工数分析

メカは初期の段階でギアの設計や固定具の設計,加工の工程で計画よりも早め目に進行していた. 一方で,フレームの作成に少し時間がかかり,昇降のための実機の確保が遅れたことで全体の開発を多少圧迫した. ギア等の開発がフレームに比べてスムーズに行ったのは,3Dプリンタを活用したために気軽な試作ができたので改善のサイクルがより早く回ったことが理由と考えられる.

エレキは全体を通して計画よりも遅れるように進行していた. 特に昇降機構はステッピングモータの制御との兼ね合いで変更点が多々あり,これに対応する基板の作成に時間を要した. ESP32のシールド基板はMIRS2024の全体からの提供となったが,そこからの配線は各班のエレキ担当で行われた(11月ごろ). システム統合確認会議の前で昇降機構にまつわる基板の作成が並行して行われ,ここでの作業が最も負担の大きいものだった.

ソフトは機能ごとの進捗に差がみられた. WebやUIについてはおおむね計画通りの進行であったが,自動走行で採用したROS2,Navigation2の実装で遅れがみられ, さらに人員不足となった為に一人に負担が集中した. また,自動音声と生成については早い段階で機能の部分的なところが完成したものの,Webの操作画面と別で開発していたために統合が遅れたと考えられる.

全体の開発工程の総括として,もう一度計画段階でガントチャートを組みなおすということを考えると, ほとんどの班員は今回のMIRSに近いような形になるというように考えた.
私見を述べると,本年度からMIRSがMG5となり,それに伴って新しくROS2の導入などを進めていった. ここで,新しく技術を取り入れることには,その技術が使えるのかもわからずに,開発を続けることの厳しさがあるように思う. 実際に,制御体系が変わったことでROSの理解が必須となり,それでもブラックボックスを残したまま開発を進めていくのには恐怖があった. 他の班の成功例が無ければ諦めていただろう,とも思う. 今年度のような新規性の高い開発において,今回のようなV字型の開発モデルには初期段階における要件定義の難しさが挙げられると思う. 新しいことを取り入れることで前の要件定義から外れてしまうということの繰り返しで,実際に機体の完成までに詳細設計は完了しなかった. このような場合にはまず新しい技術開発を初期段階でやりきってから改良を基本に作り上げていくアジャイル型の開発が望ましいと思う. また,今回の開発の個人的な経験を基に述べると,開発工程や進捗は外乱に脆弱であるために全体で「安全」な開発への取り組みが重要になるように感じた.


5.全体総括

5-1.メカニクス

反省点は、スケジュールの変更、遅れがあったことである。 メカとしての進み具合は、全体的に遅れが生じていた。その原因として、3Dプリンタによる印刷に時間がかかってしまったことや、設計の際バリを考慮していなかったため印刷のしなおしや、開発途中で設計を変えたりしたので詳細設計の作り直しなどがあげられる。 しかし、組み立てはスムーズに行うことができたため、結果的にそれほど遅れることはなかった。 全体的に進行に遅れが生じていたので、ガントチャートを定期的に確認するなどメカにおける改善点は多々あった。 また、開発に着手する前の段階では、機能やその実装方法、ニーズについて話し合う機会をたくさん設けていた。 しかし、実際には発表会で走行できず評価はあまりよくなかった。 機能の実装について話合うときに、実現性、走行の安定性を絡めた議論ができれば、もっと良い機体を造れたのではないかと考える。

5-2.エレクトロニクス

序盤はモータの仕様把握とジャンク部品の精査に時間を費やした。 作業上仕様の把握は欠かせないが、エレキ内で知識共有が不十分であった。ジャンク部品は結果的に小谷研究室から新品を譲り受け、よって短縮の余地が十分あったと考えられる。 これらは詳細設計までの期間を圧迫し、最終的に発表会時点での機能削減の要因となった。 他に大きな障害となったものは、ロータリエンコーダに接続されるケーブルの断線と配線ミスである。各部品のスペア作製は思案したが、エンコーダ側のコネクタは予備が存在しないものであった。スペアのケーブルを用意するのは不可能であったものの、だからこそ精度良く頑丈に作製することが重要だったと考える。 設計と実装が正確で堅牢あることの重要性を実感する結果となった。

5-3.ソフトウェア

おおむねの機能は想定通りの動きを実装できていたが、細かいところで開発段階での想定と実際の使用者の動きでの差があり、完璧には想定できなかった。 上下機構については回路的な問題でできなくて残念だった。

6.所感

班員の所感を以下に示す.

松嶋昂平:ソフト/PM

MIRSのソフト開発全体において本番環境を想定して作業を行うことの重要性を強く感じた。 何も本番のみならず、個人単位の作業の統合に関しても実際に統合を行う環境でのテストが行われていなかったためにその部分が作り直しになったりもしてしまっていた。 なんか理不尽レベルで負担が集中した気もしなくもないが、最終的に社会実装で問題なく動く段階まで漕ぎ着けたのでよかった。

前田航月:メカ/TL

メカが三人とも初心者であったため、ほかの班員やほかの班の人にアドバイスをもらいながら進めていった。 そのため、事前に決めた開発工程表のとおりになかなか進まず12月に入ってからそのしわ寄せがきてしまい苦労した。 全体を通してチームで行動することの難しさを学ぶことができ、 またスケジュール管理や資料の共有をすることでもっと時間を短縮できていたはずなので、その重要性について改めて考えることが出来た。 発表会についてはリハーサルでは発表時間を14分ほどまで縮めることが出来ていたが、実際に発表したときでは緊張もありオーバーしてしまった。 そのためもっと事前の練習を増やして発表時間を均一化できるようにしておくべきだったと後悔した。 また私はTLであったが、全体の開発をリードするというよりは作成者の決まっていない資料を積極的に作成したり発表会などで欠員が出た時のために代わりに入るといったことが主な役割だった。 そのため本来の役割で班員に貢献できず歯がゆい思いだった。
いろいろと至らないところが多かったが、この一年を通して問題が浮かび上がってきたことでまた次にチームでの活動を行う際に役に立てることが出来るため、 非常に有益な活動だった。

武井勇真:メカ

mirsの機体の作成・設計を担当し無事に機体が出来上がった。 また体調管理が甘く、開発や報告書作成に遅れをきたしてしまった。 また全体を通して、他人とのコミュニケーション不足による開発の遅れが目立っていたことから、 今後グループでロボットを作るときは積極的に開発状況の話合いを行っていきたい

外山英次郎:メカ

MIRSの開発ではメカを担当した。 初めて経験することも多く、この開発を通して多くのことを学べたと思う。 詳細設計・制作は計画から大幅に遅れてしまい、エレキやソフトに迷惑をかけてしまったと反省してる。 全体を通していい経験になったため、これからの活動に活かしていきたい。

中島蒼葉:エレキ

素子の仕様把握や設計、製図、実装など学習しながら進行することがほとんどだった。 振り返れば努力したこと足りなかったことはあるが、自分自身ではどうしようもない状況も多い。 他チームのブースや研究室に行けば予算外で部品が確保できるなど、直面してからでないとわからないことだった。 不足の事態に備え、余裕あるスケジュール管理、取り掛かりの早さが重要であることを改めて認識した。

室伏準:ソフト

ミルスは班員での連携が大切だと感じました。 個人の力を出し切るには、皆で協力し、支え合うことが必要でしたPMには沢山の迷惑をかけましたが本当に助けられました。 1班のメンバーの皆さん1年間ありがとうございました

渡辺尊:ソフト/DM

1年間のMIRSの授業を通して,一台のロボットをつくるのには想像以上の工程をふむ必要があり, 協働で開発する為のマネジメントは意外にも現実に対して合わせて考えるのが難しいというところを実感した. 特に新規で構想から技術開発するとなると,予想外に必要なものができたり,トラブルに見舞われたりすることが想定されるが, 今年のMIRSはMG5の初年度であり,特にそのような新規性の強い開発であったために想定通りの開発ができたとは到底言えないものとなってしまったように思う. また,特に自身に関していえば,交通事故で入院するということがあり,これによって班員に大きな負担をかけてしまったことは申し訳なく思っている. それ以上に,1班の機体をついには完成させることができたことに,班のメンバーへの感謝が尽きない.

MIRS2401ドキュメント管理台帳へ戻る