名称 MIRS2302 開発完了報告書
番号 MIRS2302-REPT-0006

版数 最終更新日 作成 承認 改訂記事
A1 2024.02.11 眞邉 開 初版

1.概要

本ドキュメントは、MIRS2302の開発完了を報告するものである。

MIRS2302では、ロボットで荷物を配達する"TENQ Project"を開発した。
システム提案時からいくつかの機能削減・実装断念があったものの、最終的に製品として必須の機能をすべて実装し、学内での社会実装実験を完了することができた。
製品の画像を次に示す。

fig.01 機体の画像 fig.02 機体の画像
fig.03 機体の画像 fig.04 機体の画像


2.発表会・展示会の振り返り

2-1.結果

発表会・展示会を経て、次の評価を得た。

来場者投票得票率 : 27.4% (2位)
技術評価 : 82.2% (3位, 実装実験を加味せず)


ブースでは、LiDARによる自律走行を行いながら、来場者の方に荷物の積み込み、発送を体験していただいた。

実際に利用する際とほとんど同じ環境での体験を実施できたため、製品の利用イメージがより鮮明になものになったと考えられる。


技術評価の内訳を次に示す。

fig.05 技術表内訳


他のチームと比較し、相対的にいい評価を得たのはB:機能であった。

これに対し、D:ニーズの評価は比較的低いものであった。


2-2.分析

上記のように、機能面での評価が高かった一方で、コンセプトやそのニーズに関する評価があまり良くなかったといえる。

機能面での評価が高かった要因として、次が挙げられる。

・自律走行の実現

LiDARによる自律走行を実現し、学内を幅広く走行できた。

・無人運用の実現

製品の利用フローを最初から最後まで無人で完結できるよう実装できた。



対して、コンセプトやニーズでの評価が良くなかった要因として、次が挙げられる。

・プレゼンでのアピール不足

製品を利用することでどのような効果が得られるのか、実測した時間データなどを示すべきであった。

・ニーズの根拠が不十分であった

「休み時間が短い」「移動が億劫」といった声がどの程度あるのか、開発前にアンケートをし、ニーズについて調査すべきであった。

・製作の背景に対し、共感を得られなかった

「自分で歩いたほうが早い」という疑念を払拭できなかった可能性がある?
本来、「早く届ける」ことが目的ではなく「人間に時間を有効活用させる」ことが目的であることをもっとはっきり説明すべきであった。

・コンセプトの練りが不十分であった

システム提案以前の段階で、もっとニーズに寄り添った仕様にすることができたのでは?



3.プロジェクトマネジメント分析

制作前後のガントチャートを次に示す。




ほぼすべての工程において、予定より大幅な遅れが生じてしまった。

そもそもの原因は、機能を盛り込み過ぎたことによる工数の誇大化であるが、そのほかに工数見積もりの甘さが挙げられる。次の要因で工数が少なく見積もられてしまったと考える。

・各工程/作業に対して、ガントチャート作成者が「これくらいかかるだろう」という感覚と作業者の感覚が合っていなかった
・行事や試験で開発がどの程度停滞するか、見通しが甘かった
・ある工程の作業が遅延してしまうと、他の工程も芋づる式に遅延してしまったこと

改善点として次を挙げる。

・ガントチャートを作成するときには作業者に工数を見積もってもらう(ヒアリングの実施)
・行事、試験前後は作業ができなくてもいいよう余裕をもたせる
・パートごとの作業をなるべく並列して行う



作業時間の内訳は次の通りである。


table1 各人・各パートの作業時間

名前 作業時間(h) 割合(%)
秋山 218 8.8
鈴木 293 12
千葉 292 12
早川 192 7.8
和田 296 12
池ヶ谷 249 10
眞邉 518 21
山本 413 17
メカ 802 32
エレキ 488 20
ソフト 1179 48
全体 2468 100

fig.06 作業時間の割合



作業時間の内訳より、ソフトの実装に大きなリソースを割かれていたことがわかる。
特に、自動走行の実装が前例もなく、手探りの状態で進めたこともありとても時間がかかってしまった。
実装したwebアプリが比較的大規模なものであったことも要因の一つである。

また、自動走行の実装にとても長い期間割いてしまったこともスケジュール遅延の原因である。



4.全体総括

プロジェクトにより完成した製品について、機能の完成度は申し分ないものであると自負している。

自動走行を実現したり、完全無人運用ができる状態まで辿り着くなど、比較的高機能な製品が完成した。

このように、高機能な製品を実現できた一方で、そのぶん作業時間が長くなってしまい、班員全員が大変な思いをしてしまった。
加えて、スケジュールが大きく遅延したり不具合が多発してしまったことも反省点である。

また、開発に着手する前の段階では、機能やその実装方法について話し合う機会をたくさん設けていた。
これは多くの機能を高い完成度で実現できた要因でもあるが、ニーズについて詳しく調査したり、コンセプトを練る機会が少なかったと感じる。

実際に、発表会における評価では、ニーズおよびコンセプトに関する評価があまり良くなかった。

機能の実装について話合うときに、ニーズやコンセプトを絡めた議論ができれば、もっと良い製品を造れたのではないかと考える。



5.所感

秋山

主にメカニクスを担当した。前期はアイデア出しやプロジェクト名を考えることの楽しさを知った。自分は面白い案を考えるのが得意なんだなと思った。
前期の途中から他の仕事が被ってしまい、思うように参加できない時期はありましたが基本設計からはガンガン参加できた。そのおかげでどんどん溶け込めたのは本当に良かった。
プレゼンをする担当にいつの間にかなっていて、発表会で前にでてプレゼンをしたことはとてもいい経験になった。上出来とは言えないけど自分にしては頑張ったんじゃないかなと思う。
背中で引っ張っていくリーダーにはいろんな形で手伝ってもらったのですごく感謝している。
MIRSを通じて、わかんないことも一旦やってみれば案外できたりするってことや、何がどれくらいできていて今最優先に進めなければいけないことは何なのかという時間の管理を班員に共有することの難しさを知った。


池ヶ谷

8人という大きなグループで一つのプロジェクトをつくりあげることは初めての体験だった。グループ活動の難しさは今までのPBLの授業や実験の授業で何度も感じていたが、今までとは規模の違う活動だった。
プロジェクトの企画を行った前期の活動では、メンバーそれぞれの考えるイメージの違いで誤解が生じたり、事前知識の違いで話し合いがスムーズに進まなかったりする問題があった。逆に、人数が多いことでそれぞれの人たちの得意分野が異なり、それぞれが自分にできることでチームに貢献していたのは良い点だと思う。
プロジェクトの実現に取りかかった後期の活動では、私はソフトウェアを担当した。ソフトウェアは今までの授業で興味はあったが、実験やグループ活動では担当できなかった分野なので、挑戦しようと思った。経験や事前知識は他の班員よりかなり少なかったが、できることに全力で取り組めたと思う。パートごとの作業が増えたことで、パートをまたいだ情報伝達の重要性を感じた。
この一年間を振り返ると、技術的な進歩とともに、グループ活動の面白さ、そして人に自分達の制作物の魅力を伝える重要性を知るという重要な経験になった。


鈴木

メカ二クス、エレクトロにクス、ソフトフェアと役割分担されたうち、自分はメカを担当した。
MIRSを通して、企業などにおける製品開発の過程(プロジェクト企画, システム提案, 基本設計と詳細設計, 開発, 統合, 試験)を体験することができ、良い経験になった。
班員同士でコミュニケーションを取る、わからないことがあったら相談することの大切さを知った。基本設計に必要な機体の外形図を設計する際、コミュニケーション不足による個々の想像するイメージの違いにより何度も外形図を設計することになってしまった。
基本設計、詳細設計においてSolidworksを使った設計の楽しさを知ることができた。また3Dプリンタの扱いなどもマスターすることができよい体験をすることができた。
このようなグループワークを通して自分から活動に参加でき、MIRSを行う前と比べるとメカの設計などの技術力をあげることができたと思う。


千葉

今回のMIRSで私はメカニクスを担当した。
去年MIRS発表会をみたときはブースに置かれていた複雑な図面を見て少し不安だった。
しかし、何度もCADでの設計を行っていくうちに楽しさが増していき、空いている時間にちょっとした設計を行うようになった。
また、はじめの頃は指定通りのものを正確に設計していたが、だんだんとフィラメントの削減や強度の増加などを考え自らアレンジを加えて設計するようになった。
私はこのMIRSで自ら作成したものを使い作品をより良くすることで、自分の意見や提案により自身が持てるようになったと思う。


早川

私は今回のMIRSでエレキを主に担当した。基本設計から実装までを通して自分の技術・知識の足りなさを何度も感じいろいろな人に助けてもらうことばかりであった。 今年のMIRSでは発表会がゴールではなく社会実装がゴールであったため、エレキとして安定して動作する基板の作成が最重要であったと感じた。しかし、実際は動作させると少しずつ結果が変化し安定した基板を作成できなかった。
また、基本設計や詳細設計を作成してい上で認識の齟齬によるミスなどが発生した。このことから班員とのコミュニケーションをしっかりとり自分のイメージをほかの人と共有することの重要さを学ぶことができた。
MIRS開発を振り返ると、技術や知識とともにグループとして開発していくために必要なもを学ぶ良い経験となった。この経験を活かし様々な問題解決や開発に挑戦していきたい。


眞邉

人の上に立つ役職を初めて担当した。自分の作業で手一杯になってしまったり、コミュニケーションが不足していたりすることが何度もあり、班員には大変な思いをさせてしまった。
特に、2班のメンバーばかり夜遅くまで残っていたのは不徳の致すところであり、マネジメント力が不足していたと痛感している。
しかし、班員の頑張りのおかげでとても高機能なものができたと自負している。技術評価において機能面で最も良い評価を得られたのはその証拠にもなっていると思う。
その一方で、コンセプトが薄かったり、ニーズに関する調査・主張が足りていなかったり、自分のコミュニケーションが不足していたと痛感せざるを得ない面が多々あった。
製作にこだわりすぎたが故の失敗だと思うので、この失敗を今後に活かせるようにしたい。


山本

一年を通して、プロジェクト企画, システム提案, 設計, 開発, 統合 というロボットを制作する流れを身につけることができた。
TLとしては、全体をまとめるにはそれぞれの分野の知識が必要であり、各パートのコミュニケーションを円滑に行うことの難しさに気づいた。
ソフトとしては、開発していく中で詳細設計書通りに開発することが不可能、また各モジュールを統合するのがこのままだと難しいといった問題に直面した。ここで、ソフトウェアを開発するには設計書を制作する時点で事前知識がとても重要であり、また拡張性のあるプログラムを書くことが大切であることに気づいた。さまざまな分野の言語に触れることができ、プログラミング力はかなり成長したように感じた。
MIRS制作を通して学んだことを今後実務などで活かせたらと思う。


和田

基板作成前に基本設計や詳細設計を行ったが、実際に作成を行うと思い通りにいかないことばかりであった。
MIRSの授業が始まる前はロボットを作ることに重点をおいているイメージが強かったが、今年度は社会実装が新しく始まったためロボットのコンセプトや目的、解決したい課題などロボット 作成以外の面で力を入れることがとても重要であると感じた。
プロジェクト企画からパート開発までそれぞれの場面で一緒に活動する人数が変わったため様々な活動の仕方を学ぶことができてよかった。
ロボット開発の面だけでなく班員とコミュニケーションをとる大切さや複数人で一つのことに向けて活動する楽しさも学ぶことができた。





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