1. はじめに

 子どものころ注射が苦手ではありませんでしたか？あるいは今でも苦手としている人もいるのではないでしょうか。注射を好きな人はいないと思います。しかし、重大な病気にかからない、悪化させないために予防接種で、病気になったとき点滴で、検査のための採血でなど様々な場面で注射は必要とされます。
 これに対して、今の私たちは注射を我慢できますが小さな子どもたちはどうでしょう？ほとんどの小さな子にとって注射とは痛いもの、さらには恐怖の対象です。きっと我慢できない子もいるでしょう。ましてや、予防接種をする機会は大人より子どもたちの方が多いです。そのような注射を嫌がる子どもたちに注射をするのは医師や看護師、両親にとっても大変なことです。
 この子どもたちの注射問題に対し、MIRS2005のプロジェクトは注射を嫌がる子どもたちやその両親、医師や看護師の方たちの助けになるでしょう。

2. プロジェクトテーマ発足の経緯

実際に注射について子育て経験者にアンケートを行った結果、


• 注射を打った後痛さを感じて泣いていたことが大変だった
• 注射のスケジュール管理が大変だった
• 注射を打たれるのに抵抗して大変だった
• 注射でぐずられると親の負担感が増す
• 泣かないけど注射を打たれると意識して腕に力を入れてしまって時間がかかった

という話を聞くことが出来た。
現実的にも、繰り返される痛みは痛みを感じやすくさせ、さらに恐怖の記憶もできてより痛みを感じやすくさせてしまう。
そこでMIRS2005では、アンケートの「注射を打たれる意識をしてしまった」という部分に注目して、注射の恐怖を記憶させないように注意をそらせばいいのではないかと考えた。
同時に、注射で楽しい記憶を作ってもらい、注射が怖いという考えをそらせばよいのではないかと考えた。
まとめると、子どもの注意をそらし、ここでしか体験できない楽しい記憶を残して注射を怖がらないようにしたいという結論に至った。

3. 製品のコンセプト

この製品は、「注射中子どもたちの注意をそらす」「楽しい思い出を作り怖いという考えをそらす」ということを目的とする。
さらに、両親や医師、看護師の方たちの負担を少しでも減らしたい。
そのため、両親や医師、看護師の方たちの負担を減らすため、子どもたちが注射に対して苦手意識を持たないようにするためにも、
「子どもたちの注意を注射からそらす」
「ここでしか体験できない楽しい思い出を作り怖いという考えをそらす」
ということ、ひいては
「そらす」
ということがこの製品のコンセプトである。

4. プロジェクトテーマ名

MIRS2005のプロジェクトテーマ名は


ソラシ♬プロジェクト


である。
「ソラシ♬プロジェクト」というプロジェクトテーマ名は、「そらす」というコンセプトから、さらに子どもたちが呼びやすく注意をそらす手段の一つである音楽に由来している。
そして、Figure 1が「ソラシ♬プロジェクト」の製品ロゴである。


Figure 1 プロジェクトロゴ

5. システムの外観イメージ

外観イメージをFigure 2からFigure 5に示す

Figure 2　内部イメージ	Figure 3　内部イメージ2
Figure 4　外装イメージ	Figure 5　三面図

6. 機能・特徴

子育て経験者に子どもの好きな場所と、どのようなものに興味を持ったかを尋ねたところ次のような回答が得られた。



質問内容	回答結果
子どもたちはどのような場所に行きたがりましたか	・海、山、川、公園、滑り台 ・工事現場 ・少し傾斜のある場所 ・いつも自転車に乗るところ ・ゴーカート、巨大アスレチック、巨大迷宮
子どもたちはどのようなものに興味を持ちましたか	・動く機械(車，電車，…) ・風、着せ替え、レゴ ・乗り物 ・かなり小さいときは音の出るおもちゃ ・周りではやっているもの、話題 ・消防署の訓練


この結果から、子どもたちは


• 特徴的な場所に行きたがる
• 特徴的なものがある場所に行きたがる
• 乗り物に興味を持つ

ということがわかった。
つまり、病院を特徴的なこと、ここでしか経験出来ないようなことが出来る場所にすれば子どもたちにまた来たいと思ってもらえると考えられる。
さらに、多くの人の実体験からも、子どものころ乗り物に夢中になるということもわかるだろう。
また、遊園地などで幼稚園年長さんから小学校低学年までの子どもたちに人気なアトラクションといえば、音が出てしゃべりる乗り物や周りから声をかけてくる乗り物だろう。
このこと踏まえて次のような機能を持たせることとした。

1. 子どもを乗せて走行して楽しませ注射が怖いという考えをそらす
2. 診察室で注射中子どもを励まし注意をそらす
3. 待合室で子どもと遊び興味をひく

そして、この機能を実現するための必要要素をTable 1のように考えた。

Table 1　実現機能

作成優先順位	実現機能	ハードウェア	ソフトウェア
1	(1)の機能	・MIRS本体と分離して、子どもを乗せることができる荷台の作成 ・子どもを乗せる椅子の工夫	・デバイスとMIRSとの通信 ・デバイスから走行データの設定が可能 ・超音波センサで衝突回避
2	(2)の機能	・頭が動作する機構 ・音声を発する回路	・デバイスからMIRSを操作可能 ・BGMと声を発するソフトを用いる
3	(3)の機能	・頭が動作する機構 ・音声を発する回路	・デバイスからMIRSを操作可能 ・BGMと声を発するソフトを用いる

Table1の優先順位について、作成は子どもを乗せることを優先して行うが同時に少しずつ音声の機能やソフトなどの製作を進めていく。

7. 想定しているユーザー

アンケートの結果小さな子どもの中でも注射が苦手な子どももいれば平気な子どももいるということがわかった。また、アンケートで次のような回答が得られた。


• 最初の1年が特に大変だった
• 小学校低学年までは大変だった
• 小学校に入るまでが大変だった
• しいて言うなら幼稚園、小学校低学年の時が大変だった

このことから、対象とする年齢を小学校低学年までとしたいと思う。
ここで、7歳児の令和元年度全国平均体重は24.2kgであった。
これらのことを踏まえて、次のようにユーザを想定する。


対象年齢	対象の体重	注射の種類	子どもたちの状態	その他
5～7歳	30kg以下	インフルエンザなど定期的な予防接種	・注射が苦手な子どもたち ・いつも注射がすぐに終わらない子どもたち ・体調に不安がない元気な子どもたち	・待ち時間：5分以上 ・注射時間:注意をそらすところから2～3分 ・ほぼ直線的に待合室から診察室まで行ける病院 ・MIRSの耐荷重は75kg ・40kgの重さまで乗せて走行できるトルクを出す

8. 動作シナリオ

ソラシ♬プロジェクトでは注射の現場で次のような変化を目指している。

従来	ソラシ♬があると
家庭で  両親：注射行くよ～  A君：いやだ～いやだ～  両親：ほ～ら～いくよ～  A君：ぜったい行かない！(泣)  両親：もう～いくよ～ 病院の待合室で  A君：注射いやだ～(泣)  両親：ほらなかないで～ 病院の診察室で  A君：うう～  先生：痛くないよ～  A君：ぐす  先生：大丈夫だからね～  A君：いや～  先生：注射  A君：うわーん(泣)	家庭で  両親：注射行くよ～  A君：やったー　ソラシと遊びたい！  両親：よし　じゃあ行こうか！ 病院の待合室で  ソラシ♬：あそぼうよ～  A君：あそぶあそぶ～  両親：ソラシ♬ありがとね～  看護師：A君　来てくださーい  ソラシ♬：よし僕に乗ってね！  A君：やった～ 病院の診察室で  先生：いらっしゃーい  ソラシ♬：ねえねえ　最近何してるの？  A君：えっとねー  ……　(A君は注射を意識していない)  先生：はい　じゃあA君またね～  A君：は～い  ソラシ♬：じゃあ帰ろうか～

Table 2に実際の現場での動作シナリオを示す。

Table 2　動作シナリオ

時系列	MIRS	子供	医師、看護師、両親
1			MIRSの走行コースを入力
2	動作開始	病院に来る
3	待合室で待機	MIRSへ
4	音声と頭の操作	MIRSで遊ぶ	MIRSのスイッチON
5		診察の順番になる
6	子供を乗せる	MIRSに乗る
7	走行スタート		走行スタートさせる
8	入力されたコースを走る
9	走行しながら音声と頭の動作をする
10	診察室到着
11		診察室のイスに座りなおす
12	音声と頭の動作で励ます	注射される	注射される
13	子供を乗せる	MIRSに乗る
14	待合室に戻る
15	お別れ

Figure 7に動作シナリオをフローチャートにしたものを示す。
Figure 8とFigure 9に想定している配置を示す。

Figure 7　動作フローチャート	Figure 8　想定配置(1)
	Figure 9　想定配置(2)

9. 標準機からの変更点

Table 3に標準機からの変更点を示す。

Table 3　標準機からの変更点

内容	目的	分野
荷台の作成	子どもを乗せるため、その重さを荷台で支える	メカ
外装の作成	子どもが乗るときのクッションや衝突時の安全確保のため	メカ
デバイスとの通信	走行するコースのデータをMIRSに送信するため	ソフト
新しい動作機構の作成	頭の動作のため	エレキ
音声機能の搭載	BGMと声を発するため	エレキ、ソフト

10. 購入予定部品

Table 4に購入予定部品を示す。

Table 4　購入予定部品

物品名	型番	単価(税込み)	数量	価格(円)	備考
メタルミニポール　直径19mm　長さ500mm	03946608	472	4	1888	販売ページ
メタルミニ棚板　（幅×奥行×高さ）400×400×33(mm)	03946118	1529	1	1529	販売ページ
メタルミニキャスター　取付高52mm　1個当たり耐荷重(走行時)25kg	03946872	989	1	989	販売ページ
押し出しパイプ　アルミ合金A1070　外径19mm　長さ342mm	A1070-PHN-19-1.5-342	448	4	1791	販売ページ
ウレタンスポンジ　（厚さ×幅×長さ）50×300×300(mm)	84966900	736	1	736	販売ページ
サテン布地1m切売　緑　幅1.5(m)	19416233	765	1	765	販売ページ
サテン布地1m切売　黄　幅1.5(m)	19416224	765	1	765	販売ページ
サテン布地2m切売　黒　幅1.5(m)	19416346	1528	1	1528	販売ページ
テトロン圧縮　容量600(g)	41668192	1199	2	2398	販売ページ
音声向けスピーカー　口径50mm　音圧レベル83 W/m(dB)	38908107	439	1	439	販売ページ
合計				12828