沼津高専 電子制御工学科
ソフトウェア調査報告書
MIRS0102-TECH-0000
改訂記録
版数 作成日 作成者 承認 改訂内容
A01 2001.12.17 山本 山本 初版

ソフトウェア調査報告


1.はじめに

 今年度から開発されるMIRSには、ISAバス仕様の新しいI/Oボードが搭載される。それに従い新しいMIRSのOSには、RT−LINUXが使用される。そのため今までMIRX68Kリアルタイムモニタにより制御していた各センサおよびPWMをそれに代わるRT-タスクモジュールおよびデバイスドライバで制御する必要がある。また今年度からLCDが使用されるため、これを制御するデバイスドライバも新たに必要となる。

2.RT−LINUX

 RT-LINUXとはリアルタイム処理が可能なOSである。LINUXを使用して計測や制御向けのハードウェア、リアルタイム処理を実現するための拡張機能として開発されたもの。

  2.1 リアルタイム処理

 実時間処理。他のデバイスからの入力信号や、プログラムからの要求に対して、即座に(リアルタイムに)これを処理する方式。制御システムなどでは、一定時間内に処理を確実に終了しなければならない場合があるがこのような実時間性を保証し、許容される時間内に処理の完了を保証する処理方式がリアルタイム処理である。

  2.2 RT-LINUXのスケジューリング

 リアルタイムカーネルは、リアルタイムプロセスとLinuxカーネルを対象にしたスケジューリングを行う。このときリアルタイムプロセスの優先度のほうがLinuxカーネルよりも高く、リアルタイムプロセスの優先度は任意に決めることができる。 Linuxでは、スケジューリング間隔が10ms程度であるが、PC/AT機の内蔵タイマICにより1μs程度の間隔になっている。このためLinuxでは、ハードウェア割り込みを受け付けてISR(インタラプトサービスルーチン)を呼び出すまでに600μsまたは20msぐらいかかるが、RT-Linuxではこれを15μs程度の短縮している。 つまり、リアルタイムカーネルがCPU割り込み制御の主導権を握り、スケジューラも兼ねることによって、時間要素をLinuxカーネルに依存しないで、自身で制御できるようにしている。 このようにMIRSの制御に普通のLinuxではなくRT-Linuxを使用しているのは、ハードウェア割り込みがあったときのスケジューリングの処理方法の違いによるところが大きな要素である。


  2.3 リアルタイムタスクのプログラミング


 3.API関数

 APIとは、OSとOS上で稼働するインターフェース規定のこと。 RT-LinuxのAPIは、工学実験で使用したV1.xのときはわずか15個であり、機能は大きく5つに分かれていた。下記にその機能、API及びそれに対応するV2.x系のAPIを表す。


POSIXスタイルインターフェース関数
機能 API関数
スレッドの生成 Pthread_create
スレッドの終了 Pthread_exit
スレッドへのシグナル送信 Pthread_kill
スレッドIDの取得 Pthread_self
スレッドアトリビュートオブジェクトの初期化 Pthread_attr_init
スタックサイズ属性の取得 Pthread_attr_getstacksize
スタックサイズ属性の設定 Pthread_attr_setstacksize
スレッドのCPU明け渡し指 Pthread_yield
スケジューリング属性の変更 Pthread_setschedparam
スケジューリングプライオリティ属性の取得 Pthread_attr_getschedparam
スケジューリング属性の取得 Pthread_getschedparam
スケジューリングプライオリティ属性の設定 Pthread_attr_setschedparam
タイマー値の取得 Clock_gettime
タイマー値の設定 clock_settime
タイマー分解能の取得 clock_getres
スケジューリングポリシー毎のプライオリティの最大値の取得 sched_get_priority_max
スケジューリングポリシー毎のプライオリティの最小値の取得 sched_get_priority_min
Mutex属性オブジェクトのプロセス間共有設定の取得 pthread_mutexattr_getpshared(3)
Mutex属性オブジェクトのプロセス間共有設定の設定 pthread_mutexattr_setpshared(3)
Mutex属性オブジェクトの生成、初期化 pthread_mutexattr_init(3)
Mutex属性オブジェクトの破棄 pthread_mutexattr_destroy(3)
Mutexタイプ属性の設定 pthread_mutexattr_settype(3)
Mutexタイプ属性の取得 pthread_mutexattr_gettype(3)
Mutexの初期化 pthread_mutex_init(3)
Mutex破棄 pthread_mutex_destroy(3)
Mutexのロック pthread_mutex_lock(3)
Mutexのロック pthread_mutex_trylock(3)
Mutexのアンロック pthread_mutex_unlock(3)
非POSIXスタイル関数
機能 API関数
CPU IDのスレッド属性オブジェクトの設定 pthread_attr_setcpu_np
CPU IDのスレッド属性オブジェクトの取得 pthread_attr_getcpu_np
スレッドの周期実行の抑制(wait) pthread_wait_np
スレッドの削除 pthread_delete_np
スレッドの浮動小数・演算の使用許可 pthread_setfp_np
スレッドのリアルタイム実行条件を指示 pthread_make_periodic_np
スレッドをサスペンド pthread_suspend_np
サスペンド中のスレッドを再開 pthread_wakeup_np


表中に出てくる用語の解説