移動機能の検討

作成者 14番 小池 銀嗣


1、目的

 MIRSにおける移動機能、すなわちモーターについて理解する。

2、DCモーター

 いわゆる直流モーターであり、直流電流で回す事が出来る。DCモーターは制御用モーターとして非常に優れた回転特性を持っている。例えば、大きな起動トルク、電圧変化に対するリニアな回転特性、入力電流に対する出力トルクの直線性、出力効率のよさ・・・等といったおよそ制御用モーターに要求される全ての性能を兼ね備えたモーターといっても過言ではない。
 ※トルクとは、モーターの回転力の事である。これが大きいほどその出力パワーも大きくなる。ここで、トルクを日本語に訳すと「回転力」といった意味になる。しかしここでのトルクは直線運動における推進力に相当している。また、トルクの単位は[kgf・m]で表されるが、これをSI単位系に直すと[N・m]となる。

3、今回使用するモーターの仕様

モーター型番RE025-055-34EBA200A
トルク定数16.30(mNm/A)
端子間定数1.34(ohm)
無負荷電流53.90(mA)
端子間電圧7.2(V)
ギヤ型番GP026A037-0016B1A00A
ギヤ変速比16.00:1
ギヤ効率76(%)
周囲温度25(℃)

4、モーターの制御法

 モーターの制御は、直流の電源をパルス状にして送る事により行う。電流をパルス状にして送り、モーターを制御する方法をパルス制御法という。そして、このパルス制御法のはっ典型が、PWM制御法である。PWM制御法とは、ONパルスの通電幅を任意に変化させて、モーターの回転数などを制御する方法である。両者とも、詳細を下に示す。

4ー1、パルス制御法

 この制御方法は、モーターのON、OFFをパルスによって行う。これによりOFFの時の電池消耗がまったく無くなる。また、ONの時でも制御トランジスタが完全に飽和しているので、電力ロスも最小限に抑える事が出来る。しかし、パルス駆動によるモーターの振動音、ブラシ、コシュテータの著しい磨耗、電気ノイズの発生などのいろいろな問題を抱えている。図1は、パルス制御法の原理図である。
 なお、モーターへのピーク電圧が電源電圧とほぼ等しくなるが、この場合、OFFの時があるので、その平均電力は低くなる。
 DCモーターをスイッチングトランジスタとフライホイールダイオードから構成する事により省エネルギー型のモーター制御が出来る。これはスイッチングトランジスタとフライホイールダイオード、それにモーター内部のコイルインダクタンスをエネルギー蓄積として利用するので負荷蓄積用コイルを必要としない巧妙な方法である。下図にその原理を示す。
 

4ー2、PWM制御法

 この制御方法はパルス制御法を発展させたものであり、ONパルスの通電幅を任意に変化させている。つまり、パルス幅を変調する事によって、結果的にモーターへの供給エネルギーをコントロールしている。その様子を図2に示す。
 ところで、PWMを含めたパルス制御法は、電力パルスがONの時だけモーターに電流を供給する。そしてそれ以外の時は休んでいる。よって、その間はトランジスタや電源の負担が軽くなる。しかし、汚点が無いわけではない。それは、OFFの時に起こる。ご承知のとおり、モーターはコイルで出来ている。よって、それは必ずなんらかのインダクタンスを持っている。したがって、OFFの時に自己誘導作用を発生し、大きな逆起電力を誘発するこれは、制御用トランジスタを破壊するだけでなく、非常に大きな雑音を周囲に巻き散らし、ひいては大きな電磁波公害となる。これを解決したのがダイオードDで、一般にはこれをフライホイールダイオードと呼ぶ。この働きは、モーターOFF時に誘発する逆方向の電力をダイオードを介して同じモーターに回生してやることである。こうすることによって、高レベルの電気雑音が抑制される。そればかりでなく、そのエネルギーをOFFの間中モーターに流す事が出来る。よって、モーター電流が連続的になる。その結果としてエネルギー効率が上がり、なおかつモーターの動きもスムーズになる。まさにいいとこだらけ、といった感じである。

5、可逆パワー変換回路

 PWM変換回路から送られてきたPWM信号を受けて、モーターの回転速度や回転方向を決める電圧を発生させ、モーターに電力を供給する。
 下その回路図を示す。

6、電流保護回路

 装置の安全性を高めるためにモーターの過電流保護回路が必要になってくる。ヒューズなどでなく電流情報のみで動作させている(多少時間的要素が含まれている)。次の図Aは、モーターを起動させた時の電流特性、過負荷がかかった時の電流変化、そしてモーターがロックしている時の電流の値を示している。その下の図Bは、図Aを分かりやすくアレンジしたものである。
 図Bで、T5の時、モーターが発熱的に絶え得る範囲が拘束時間の限度で、これ以上通電が持続すればモーターは焼失、又は機能低下を来す。だから、安定範囲の限度時間、過大電流が流れつづけると遮断する回路を構成する。つまり、過電流と限度時間を同時に判定するような回路を構成すればよい。
 

7、概略ブロック図

 概略ブロック図を下に示す。

8、ギヤ比の設定

8ー1、MIRS本体

  
重量m
タイヤの直径d
最大速度VMAX

8ー2、回転数、加速度等の求め方

  
タイヤの回転数X[rps]=(VMAX×1)÷(π×d)
減速比R=[定格回転数]÷X
トルクT[N]=[定格トルク×モーター個数]÷[タイヤ半径×減速比]
加速度a[m/s2]=F÷m
最大速度に達するまでの時間t[s]=最大速度÷加速度

8ー3、ギア比の計算

 
減速比R=H/K+I/K+J/K

9、バッテリーの調査

 MIRSの電源としてNi-Cdバッテリー(7.2V-1700mAh)を2本使用する。1本は5Vに変換し、センサーI/Fボードと68000I/Oボードに送られて、もう1本は、駆動用として可逆パワー変換ボードに送られる。メインスイッチにより5V電源が入り、スタートスイッチにより駆動用電源が入るようになっている。
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参考文献

Last Update : 1996.12.20
Dep. of Electoronics and Control Enginnering