MPU

7.68000MPUの端子機能

1.アドレスバス(A1〜A23)

 A1〜A23の23本のアドレスバスがある。端子としては23本あるが、後述のUDSバー,LDSバーの信号線と合わせて24
ビットのアドレス信号により16Mバイトのメモリ空間をアクセスすることができる。16進表示で$000000番地から$FFF
FFF番地となる。

2.データバス(D1〜D15)

 16ビットの双方向性バスで一度に16ビットのデータを転送することができる。場合によっては上位8ビット(D8〜D15)だ
けを使ったり、下位8ビット(D0〜D7)だけを使うこともできる。32ビットのデータ転送は16ビットずつ2回に分けて行われ
る。68000では32ビットデータをロングワード、16ビットデータをワード、8ビットデータをバイトと呼んでいる。

3.非同期制御信号(ASバー,R/Wバー,UDSバー,LDSバー,DTACKバー)

 メモリとの接続やデータ転送において最も基本的な信号であり、DTACKバーを除く信号は同期式のデータ転送にも使われる。
 ASバー(Adress Strobe)はアドレスバス上に有効なアドレスが確定していることを示し、同時にMPUがメモリ
(あるいは周辺LSI)をアクセスしていることも示している。
 R/Wバー(Read/Write)はデータ転送の方向を示しており、Hでリード、Lでライトである。
 UDSバー,LDSバー(Upper Data Strobe,Lower Data Strobe)はデータ転送をワードサ
イズで行うか、バイトサイズで行うかを示す。UDSバーは上位8ビット、LDSバーは下位8ビットに対応している。両方の信号が
アサートされればワードデータ、UDSバーとLDSバーが単独でアサートされればそれぞれ上位8ビットのみ、下位8ビットのみと
のる。
 DTACKバー(Data Transfar Acknowledge)は非同期バスを代表する特徴的信号である。MPUはこ
の信号が外部から入力されるまでデータ転送のサイクルを終了しない。DTACKバーが早く入力されればリード/ライトのサイクル
は早く終わり、遅ければ遅く終わる。つまり外部デバイス(メモリや周辺LSI)のスピードに応じて早くも遅くも自由に調節でき効
のよいデバイスを構成することが可能になる。設計者はこれらのことを考慮してDTACKバー発生の回路を作成しなければならない。

4.68000周辺制御信号(E,VMAバー,VPAバー)

 68000MPUを使ったシステムに、従来の8ビットMPU(6800や6809)で使っていた周辺LSIを接続するための端
子である。8ビットMPU用の周辺LSIは同期式データ転送を行っている。そのためE,VMAバー,VPAバーを使って同期式デ
ータ転送ができるようになっている。
 E(Enable)は同期式データ転送におけるクロックとして働き、Eの立下がりに同期してデータ転送が行われる。6800の
クロックΦ2信号、6809のE信号に相当する。
 VMAバー(Vaild Memory Adress)は68000が同期式でデータ転送をしていることを示す信号で、周辺L
SIはVMAバーがアサートされている期間のEの立下がりを使わなければならない。6800のVMAに相当する信号である。
 VPAバー(Vaild Peripheral Adress)はMPUに対して同期式データ転送を要求する信号である。した
がって同期式データ転送が必要なデバイスがアクセスされたとき、VPAバーをアサートしてやればよい。MPUはメモリや周辺LS
Iをアクセスしたときには、そのデータが同期式であるか非同期式であるかはわからない。DTACKバーが入力されれば非同期式で
あり、VPAバーが入力されれば同期式である。

5.割り込み入力端子(IPL0バー〜IPL2バー)

 68000は優先順位のついた七つの割り込み(レベル1〜レベル7)を使うことができる。優先度はレベル1がもっとも低くレベ
ル7がもっとも高い。またレベル7はNMI(Non Maskable Interrupt)として働く。IPL0バー〜IPL
2バーの3本を使って(000)2〜(111)2にコード化した割り込み信号を入力する。(000)2は割り込み要求のない状態
である。

6.バスアービトレーション制御(BRバー、BGバー、BGACKバー)

 バスアービトレーションとはバスの配分であり、MPU以外にバスを使うデバイスがある場合、バスを使う権利(バスマスタ権)の
やりとりをするための信号である。
 BRバー(Bus Request)はMPU以外のデバイスがMPUに対してバスマスタ権を要求する信号である。
 BGバー(Bus Grant)はBRバーに対する対応信号であり、MPUは次のバスサイクルでバスマスタ権を放棄する。(つ
まり外部デバイスがバスマスタとしてバスを使える)ことを意味する。
 BGACKバーはBGバーを受けた外部デバイスが現在バスマスタとしてバスを占有していることをMPUと他の外部デバイスに知
らせる信号である。これら3本の制御信号を使うことにより効率のよいバスマスタ権の受渡しが行われる。

7.プロセッサステータス(FC0〜FC2)

 MPUがどのような状態で動作しているのかを知らせる信号である。スーパバイザ状態かユーザ状態か、データのアクセスか命令の
フェチか、また割り込み信号を受付けた状態等を3ビットにコード化して出力している。

8.システムコントロール(BERRバー,RESバー,HALTバー)

 BERRバー(Bus Error)はデータ転送に異常があるMPUに知らせる信号である。MPUはBERRバーがアサートさ
れると現在のバスサイクルを中断し、バスエラー例外処理を実行する。
 RESバー(Reset)は通常、入力端子として働きシステムリセットを行う。ただしRESET命令を実行したときは出力端子
として働きリセット端子に接続された外部デバイスのリセットを行う(MPUはリセットされない)。
 HALTバー(Halt)は通常、入力端子として働きMPUのホールトに使われる。HALTバー信号がアサートされるとMPU
は現在のバスサイクルを終了後ホールトされる。ホールト状態では、アドレスバス、データバスはスリーステート状態、R/Wバー,
ASバー,UDSバー,LDSバーは”H”になる。HALTバー端子が出力として動作するのは二重バス障害(ダブルバスフォール
ト)が発生したときである。二重バス障害とはバスエラーが続けて2回起こることであり、MPUは自らホールト状態に入り、リセッ
ト以外では回復できない。

9.その他の信号(CLK,Vcc,Vss)

 CLK(Clock)はMPUが動作する基本となるクロック状態であり、一定の周期をもっていなければならない。またいかなる
場合にも止まってはならない。最高周波数はバージョンにより6.0,8.0,12.5MHzのものがある。いずれのバージョンで
も最低周波数は4.0MHzである。
 Vcc(電源)、Vss(設置)は各2ピンある。これはLSIのチップ内での電位を安定に保つためであり、2ピンとも接続しな
ければならない。


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