dcmotor
1997.1.8 杉村純 作成
モーター・駆動に関する調査
1:目的
MIRSの走行にあたってのモーターの役割、仕組み、制御について検討する。
2:DCモーターについて
一般的に言う直流モーターであり、直流電源で回すことができる。
DCモーターは、制御用モーターとして非常に優れた回転特性を持っている。
例えば、大きな起動トルク、電圧変化に対するリニアな回転特性、入力電流に対する出力トルクの直線性、出力効率の良さ・・・などおよそ制御用モーターに要求されるす べての性能を兼ね備えたモーターと言える。
※トルクとは、モーターの回転力であり、これが大きいほどその出力パワーも大きくなる。
ここでトルクを日本語に直すと回転力ということになるが、このトルクは直線運動における推進力に相当する。
また、トルクの単位は、[Kgf/m]で表されるが、これをSI単位系に直すと[N/m]になる。
DCモーターの基本

電源電圧がモーターに供給されている時の関係式は、
Ea = Ra × Ec
Eaが供給された直後は、モーターが回転していないので、Ecは0である。
従ってモーター起動時の式は、
Ea = Ra × Ia
Ia = Ea × Ra
である。
Iaは、このモーターの起動時の電流であり、これがこのモーターの最大電流である。
(この時モーターは最大トルクを生じる。最大トルクを生じる のは、この時と過負荷で動けない時であり、負荷が最大トルクを上回っていて 起動できない時、 W=Ia2×Ra のジュール熱を発生させ、その熱によってモーターを損傷する恐れがある。ゆえに、負荷は、最大トルクの30〜50%位にする。)
モーターの電流と回転数の関係
モータートルクTは、一般にモーター自身のトルク定数をKtとすると、流れる電流Iaに比例する。
T = Kt × Ia
これより、モーターに流れる電流は、
Ia = T ÷ Kt
となる。
また、モーターの回転数Nは、逆起電圧Ecとほぼ比例する。
Ec(N) = Ea − Ra × Ia
より、
N = Ec(N)/(Ec ÷ N’)
[Ec(N):モーター仕様の逆起電圧 C[V](N'[rpm]) ]
という関係がある。
モーターの特性カーブ

モーターの性能
・モーターの電気的時定数τeを小さくする。
τeL/Ra (L:等価インダクタンス、Ra:巻線抵抗)
これより、等価インダクタンスであればよい事がわかる。
・機械的時定数τmを小さくする。
τm=(Jm)/(Ke・Kt)(Jm:ロータイナーシャ、Ke:逆起電力定数、Ra:電機子巻線定数、Kt:トルク定数)
・N−Tカーブのリ二アリティをよくする。理想的には、IとNは比例、TとN は逆の比例関係になるが、実際は、Nの上限で特性が曲がったり下限でリプルを生じる。
ゆえに多スロット型、スロットレス型のモーターを選ぶ必要がある。
3:PWM制御
@パルス制御法
パルス制御法は、モーターのオンオフ制御をパルスによって行なう方法である。
これによりオフタイムでの電池の消耗が全くなくなる。
また、オンタイムでも制御トランジスタが完全に飽和しているので、ここでの電力ロスが最小限に抑えられ、トランジスタの電力ロスが軽減される。
しかし、パルス駆動によるモーターの振動音、電気ノイズの発生などの問題を抱えている。
図1は、パルス制御法の原理である。
なお、この回路では、モーターのピーク電圧が電源電圧とほぼ同じになるが、この場合オフタイムがあるので、その平均電力は低くなる。
DCモーターをスイッチングトランジスタとフライホイールダイオードから構成することにより、省エネルギー型のモーター制御が出来る。
これはスイッチングトランジスタとフライホイールダイオード、それにモーター内部のコイルインダクタンスをエネルギー蓄積としてモーターのコイルを利用するので負荷蓄積用コイルを必要としない巧妙な方法である。
図に駆動部を、また図に各部の電流波形をそれぞれ示す。
図においてトランジスタTr1ON時間t1の間にモーターに電流icが流れ、Tr1がOFF時間(T−t1)にはダイオードFDを経て、idがモーターに流れ込む。
これによってモーター電流Imは、icとidを合成したものである。
この場合スイッチング周波数−周期Tがモーターの電気的時定数より小さければ、
τ = L/R (1)
となり、モーター電流imはわずかなリプルを含んだ直流電流となる。
電源Esから流れ出る電流isの算術平均は、

制御回路の損失は次のようになる。
PL=im×ES×ν=PM+PV (3)
但し、ν:デューティサイクル、PM:モーターの損失、
PV:回路の消費電力
ν=t1/T (4)
PM=Im×EM (5)
PL=im×EM+im×ED+Im×VCE(sat) (6)
(3)、(6)式よりデューティサイクルは、
(3)、(6)式よりデューティサイクルは、

電源からの流出電流の算出平均値は、

そして制御回路の効率は、

回路上、VCE(sat)≒ED になるので、式は簡略化される。
このようにパルス制御(デューティ制御)は、軽負担ほど効率が良くなる。
なお、図1の回路では、モーターへのピーク電圧が電源電圧とほぼ同じになるが、この場合、オフタイムがあるので、その平均電力は、低くなる。

APWM制御

モーターのPWM制御は、@のパルス制御法の発展形であり、この方法は、オンパルスの通電幅を任意に変化させている。
つまり、パルス幅を変調させることによって、結果的にモーターへの供給エネルギーをコントロールしている。
図2は、PWM制御の概要を表したものであり、ここでは、三つのパルス幅について説明している。
一番上がデューティ大で、そのエネルギーが最も大きいため、回転数もこれに対応して高くなっている。
なお、この時オフタイムが最も短い。
反対に下側のデューティ小は、回転数もそれに対応して低くなっているが、この時、オフタイムが最も長い。
また、真ん中は、デューティ50%で、この時、オン・オフタイムともに等しく、制御回路のちょうど中間を表わしている。
また、PWM回路では、PWM制御信号を作り出しているが、左右のモーターそれぞれに方向1bitと、速度データ7bitの8bitずつ用意する。
速度データは、7bitなので、127段階の制御をすることが出来る。
PWM信号を送る際、駆動系と回路系の電源、GNDは別にしなければならないため、信号線をそのままつなぐことは出来ない。
そこでフォトカプラを用いて、光によって信号を送る。
ところで、PWMを含めたパルス制御法は、電力パルスがオンの時だけモーター電流を供給し、それ以外のときは、休んでいるのでその間トランジスタや電源の負担が軽くなるのは良いが、欠点がないわけではない。
これは、オフタイム中におきてしまう事で、モーターもコイルがある限り、そこには必ずいくらかのインダクタンスを持っているので、これにオフ時の自己誘導作用が発生し、大きな逆起電力を誘発する。
これは、制御用トランジスタを破壊するだけではなく、非常に大きな雑音を周りに巻き散らすことになり、ひいては、大きな電磁場公害となる。
これを解決するのが、ダイオードDで、一般には、これをフライホイールダイオードと呼んでいる。
この働きは、モーターオフ時に誘発する逆方向の電力をダイオードを介して同じモーターに回生してやることである。
こうすることによって、高レベルの電気雑音が抑制されるばかりではなく、そのエネルギーをオフタイム中、モーターに流す事ができるので、モーター電流が連続的となり、その結果エネルギー効率があがり、なお、モーターの動きもスムーズとなる。
4:可逆パワー変換回路
(1)機能概要
PWM変換回路から送られてきたPWM信号を受けて、モーターの回転速度や回転方向を決める電圧を発生させて、モーターに電力を供給する。
(2)回路図

5:電流保護回路
装置の安全性を高めるために、モーターの過電流保護回路が必要になってくる。
ヒューズなどでなく、電流情報のみで動作させている。(多少時間的要素が含まれている。)
次の図Aは、モーター起動時の電流特性、過負荷がかかったときの電流変化、モーターがロックしているときの電流値を示している。
その後の図Bは、図Aをわかりやすくしたものである。
図BでT5の時モーターが発熱に耐えられる範囲が拘束時間の限度で、これ以上通電が持続すれば、モーターは、焼失、又は機能低下を起こしてしまう。
だから、安定範囲の限度時間、過大電流が流れつづければ遮断する回路を構成する。
つまり、過電流と限度時間を同時に判定するような回路を構成すればよい。


今回使用するDCモーターの仕様
モーター型番:RE025−056−34EBA200A
トルク定数 :16.30[mNm/A]
端子間抵抗 :1.34[ohm]
無負荷電流 :53.90[mA]
端子間電圧 :7.2[V]
定格回転数 :261[rpm]
ギア型番 :GP026A037−0016B1A00A
ギア減速比 :16.00 : 1
ギア効率 :76[%]
周囲温度 :25.0[℃]
参考文献 mirs95 佐藤さん作成 DC.SAM
Last Update:
元に戻る