3 DCモータ


1 DCモーターとは


 一般的に言う直流モーターであり、直流電源で回すことができる。DCモーターは制御用モーターとして非常に優れた回転特性を有している。例えば、大きな起動トルク、電圧変化に対するリニアな回転特性、入力電流に対する出力トルクの直線性、出力効率の良さ・・・などとおよそ制御用モーターに要求されるすべての性能を兼ね備えたモーターといえる。 ※トルクとは、モーターの回転力のことであり、これが大きいほどその出力パワーも大きくなる。ここでトルクとは日本語に訳すと回転力ということになるが、このトルクは直線運動における推進力に相当する。また、トルクの単位は[kgf・m]で表されるが、これをSI単位系になおすと[N・m]になる。


DCモーターの基本

 電源電圧がモーターに供給されている時の関係式は、
     Ea=Ra×Ia+Ec
 Eaが供給された直後はモーターが回転していないので、Ecは0である。従って モーター起動時の式は、

モーター起動時の式    


     Ea=Ra×Ia
     Ia=Ea÷Ra
である。Iaは、このモーターの起動時の電流であり、これがこのモーターの最大電流である。(この時モーターは最大トルクを生じる。最大トルクを生じるのはこの時と過負荷で動けない時であり、過負荷が最大トルクを上回っていて起動できない時、 W=Ia2×Ra のジュール熱を生じ、その熱によりモーターを損傷する恐れがある。
 従って、負荷は最大トルクの30〜50%位にする。)

モーターの電流と回転数との関係

 モータートルクTは一般に、モーター自身のトルク定数をKtとすると、流れる電流Iaに比例する。
     T=Kt×Ia
これより、モーターに流れる電流は、
     Ia=T÷Kt
となる。又、モーターの回転数Nは、逆起電圧Ecとほぼ比例する。
     Ec(N)=Ea−Ra×Ia より、
     N=Ec(N)/(Ec÷N')
[Ec(N):モーター仕様の逆起電圧C[V](N'[rpm])]
という関係がある。


 

モーターの特性カーブ

モーターの性能

・ モーターの電気的時定数τeを小さくする。
     τeL/Ra (L:等価インダクタンス、Ra:巻線抵抗)
これより、等価インダクタンスであればよい事が分かる。

モーターのT-N,T-I曲線    
モーターのT-N,T-I曲線


・ 機械的時定数τmを小さくする。
     τm=(Jm・)/(Ke・Kt)
           (Jm:ロータイナーシャ、Ke:ぎゃく起電力定数
             Ra:電機子巻線抵抗、Kt:トルク定数)
   従って、Jm、Raは小さく、Ke、Ktを大きくすればよい。


・ N−Tカーブのリニアリティをよくする。理想的には、IとNは比例、TとNは逆の比例関係になるが、実際は、Nの上限で特性が曲がったり下限でリプルを生じる。従って、多スロット型、スロットレス型のモーターを選ぶ必要がある。


 

PWM制御

PWMの役割について

 PWM(Pulse Width Modulation)回路とは、周期は一定で、入力信号(DCレベル)の 大きさに応じて、パルス幅のデュ−ティ・サイクル(パルス幅のHとLの比)を変え、モーターを制御する回路でを制御する回路でにたいして、これは飽和(スイッチング)領域での制御となる。
 従って、パワー・トランジスタを飽和領域で使用する為、電力ロスが軽減され、トランジスタもそれ程発熱しない。更に必要な時間だけ通電しますので、モータ・ドライブ回路全体の効率があがり、電圧の負担も軽くなる。


パルス制御法

 パルス制御法はモータのオンオフ制御をパルスによって行う方法である。これによりオフタイムでの電池の消耗が全くなくなる。またオンタイムでも制御トランジスタが完全に飽和しているので、ここでの電力ロスも最小限に抑えられ、トランジスタの電力ロスが著しく軽減される。
 しかし、パルス駆動によるモータの振動音、ブラシ、コシュテータの著しい磨耗、それに電気ノイズの発生等のいろいろな問題を抱えている。下の図はパルス制御法の原理図である。
 なお前ページの回路では、モータへのピーク電圧が電源電圧とほぼ同じになるが、この場合、オフタイムがあるのでその平均電力は低くなる。


パルス制御法の原理図    
パルス制御法の原理図


・PWM制御

 モータのPWM制御は、パルス制御法の発展形でありこの方式はオンパルスの通電幅を任意に変化させている。つまり、パルス幅を変調することによって結果的にモータへの供結エネルギーをコントロールしている。
 反対に下側のデューティ小は、回転数もそれに対応して低くなっているが、この時、オフタイムが最も長い。
 また真ん中は、デューティ50%で、この時オンタイムオフタイム共に等しく、制御回路のちょうど中間を表している。
 ところで、PWMを含めたパルス制御法は、電力パルスがオンの時だけモーター電流を流し、それ以外の時は休んでいるので、その間トランジスタや電流の負担が軽くなるのは良いが、汚点がない分けではない。これは、オフタイム中に起きてしまう事で、モータもコイルがある限り、そこには必ず何がしかのインダクタンスを有するので、これにオフ時の自己誘導作用が発生し、大きな逆起電力を誘発する。これは、制御用トランジスタを破壊するだけでなく、非常に大きな雑音を周囲に巻き散らし、ひいては大きな電磁波被害となる。これを解決したのがダイオードD1で、一般にこれをフライホイールダイオードと呼んでいる。この働きは、モーターオフ時にゆうはつする逆方向の電力をダイオードを介して同じモータに回生してやる事である。こうすることによって、高レベルの電気雑音が抑制されるだけでなく、そのエネルギーをオフタイム中、モータに流す事が出来るので、モーター電流が連続的となり、その結果エネルギー効率が上がり、なおかつモーターの動きもスムーズになる。
 なおこの回路では、モータへのピーク電圧が電源電圧とほぼ同じになるが、   この場合、オフタイムがあるのでその平均電力は低くなる。


   次にPWM制御回路図を示す。


PMW制御回路図    
PMW制御回路図


 下の図は、3つのパルス幅について説明している。
 一番上がデューティ大で、エネルギーが最も大きく、回転数もこれに応じて高くなる。
 なお、この時オフタイムが最も短い。


パルス幅について    
パルス幅について


アナログ制御とPWM制御との違い

アナログ制御とPWM制御1    


アナログ制御とPWM制御2    


 A図はPWM制御の波形を示したものである。図(a)は信号Aが急激に変化した場合の、電力変化のあるパルス列となる。これより、モーターに供給されるエネルギ変化の様子が分かる。


・タイマICによるPWMパルスの作り方


 50Hz〜4kHz程度の基本周期をもつパルス列を発生させ、デューティ比を制御するには、専用のハードウェアかタイマICを用いるのが簡単である。
 下に図を示す。


タイマICによるPWMパルス    
タイマICによるPWMパルス


 1kHzの基本周期は外部発信機で発生させ、その立ち上がりでタイマをイニシャライズする。  デゥーティー比はプリセッサよりデータとして与える。タイマはワンショット・パルス発生モードとしてイニシャライズさせるたびにデータの値*タイマ・クロック時間だけ出力を"1"とする。

◎ 今回使用するモーターの詳細 ◎

モーター型番RE025-055-34EBA200A
トルク定数16.30[mNm/A]
端子間抵抗1.34[ ohm ]
無負荷電流53.90[ mA ]
端子間電圧7.2[ V ]
ギア型番GP026A037-0016B1A00A
ギア減速比16.00:1
ギア効率76[ % ]
周囲温度25.0[ ℃ ]
出力トルク回転数電流入力出力効率
[Nm][rpm][mA][W][W][%]
0.0026153.900.390.000.0
0.10236558.424.022.4761.5
0.202121062.947.654.435709
0.301871567.4611.29508752.0
0.401622071.9814.926.7845.5
0.501372576.5018.557.1838.7
0.601133081.0222.187.0731.9
0.80634090.0629.455.2717.9
0.90384594.5933.083.6010.9
1.00135099.1336.711.413.8
1.05-05373.1338.69-0.00-0.0
 
最大連続電流時最大出力時最大効率時
トルク0.34[Nm]0.53[Nm]0.10[Nm]
回転数177[rpm]131[rpm]237[rpm]
電流1771[mA]2714[mA]538[mA]
出力6.30[W]7.20[W]2.38[W]
効率49.4[%]36.9[%]61.5[%]

[引用]
DCモーター    MIRS94/MIRS9401/MEMO/DCMOTA