ロータリー・タッチセンサボード
 
(1)ロータリエンコーダ・ボードの機能解説
   ロータリエンコーダ・ボードは、ロータリエンコーダ信号処理回路とタッチセンサ
   信号処理回路を1つにまとめ、IndustryPackの形態にしたものである。
   ボードには、2相式のロータリエンコーダを2つと、タッチセンサを3つまで取付可能とする。
  ボードの機能は次のとおりである。
ロータリエンコーダの信号処理であるカウント機能
カウンタのリセット機能
タッチセンサによるスイッチ割込み機能
割込みサイクルに必要になる割込みVECTOR発生機能
ソフトウェアによる割込みマスク機能
初期化機能

(2)回路構成
 ロータリエンコーダ・ボードは、大別してロータリエンコーダ信号処理回路とタッチセンサ
  信号処理回路、そしてVIPC310とのインタフェースのための制御回路から成る。
  
 1)ロータリエンコーダ信号処理回路
   ロータリエンコーダ信号処理回路は、ロータリエンコーダの2相の信号から
    ロータリエンコーダの回転数と回転方向を測定し、CPUの命令にしたがって
    データの出力を行う。
   回路はロータリエンコーダ接続回路とカウンタ回路、カウンタリセット回路から成る。
   ロータリエンコーダ接続回路はロータリエンコーダの出力波形が論理回路
   の”H”、”L”レベルを満足するように振幅を設定するためのものである。
    この回路は、使用するロータリエンコーダに合わせて設計する必要がある。しかし、
      これまでのMIRS開発に用いられてきたロータリエンコーダと同じものを使用するため、
      ロータリエンコーダ接続回路は新しくは設計せずこれまでのものをそのまま用いた。
      図2にロータリエンコーダ接続回路を示す。

  カウンタ回路はロータリエンコーダの信号をカウントし、2相の信号の位相差から回転方向を判断する。
  これまでは、フリップフロップを使ってカウンタと方向判別回路を設計してきたが、
  ここではマウス制御用カウンタIC(μPD4701A)を利用する。μPD4701A
  を利用することのメリットを、次に挙げる。
 1つめに、μPD4701Aがカウンタと方向判別回路の両方の回路を兼ね備えているということ。
  これにより、カウンタ、方向判別回路の信頼性は高上する。
 2つめに、2相式のロータリエンコーダを2つまで取付可能であるということ。μPD4701A
  を利用すればIC1チップで2つのロータリエンコーダの信号処理が行え、回路の小型化が容易に
  できる。回路の小型化については、ボードをIndustryPackの形態にするためにも重要
  になる。3つめに、μPD4701Aのカウンタのカウント動作の点が挙げられる。これまでは、
  ロータリエンコーダの2相の信号のうち、片方の相のパルスの立上がりに対してカウンタを
  アップカウントさせ、方向はカウントとは別に2相の位相差から判別していた。それに対して
  μPD4701Aのカウンタは、2相のパルスの立上がり、立下がり全てに対してカウンタを動作
  させる。そのため、ボードの分解能はこれまでの4倍にまで高めることができる。ちなみに
  カウンタは2の歩数表示で2相の位相差から常に方向を判断し逆転の時にはダウンカウントする。
 4つめに、μPD4701Aの持つマウスのボタン入力ピンをタッチセンサに応用できることも
  挙げられる。カウンタリセット回路は、カウンタのリセット信号を発生させる回路である。
  μPD4701Aの2つのカウンタは独立にリセット機能を持つため、回路も2つのカウンタを
  別々にリセットできるようにした。

 2) タッチセンサ信号処理回路
 タッチセンサ信号処理回路は、タッチセンサの信号からスイッチ割り込みの割込み要求を行う。
  回路は、タッチセンサのチャタリング防止回路と割込み信号発生回路、タッチセンサステータス
  出力回路、割込みVECTOR発生回路から成る。
 タッチセンサの信号処理にも、μPD4701Aを利用する。タッチセンサはSR−FFを用いて
 チャタリングを除去し、その信号をμPD4701Aに取り込む。そして、μPD4701Aの
 持つスイッチフラグ信号を利用して割込み信号発生回路で割込み信号を発生させる。タッチセンサ
 の状態は、μPD4701Aのカウント値とまとめて出力される為、別に、タッチセンサステータス
 出力回路を設計する必要はない。図3に、μPD4701Aのデータ出力形式を示す。
 割込みVECTOR発生回路は、割込みサイクル時にVIPC310−IP間のデータバス
(Inter  nal Data Bus)に8   ビットの割込みVECTORを載せる回路
 である。IPからデータバス  には通常μPD4701Aの出力データが載せられる為、
 バス上にμPD4701Aの出力データと割込みVECTORが同時に載るようなことの無いよう、
 3ステートのバッファを用いて割込みVECTORの出力を制御する。割込みVECTORの設定は、
 8ビットディップスイッチによって行う。IPをVIPC310に搭載するとき、両者は互いに
 ボードの部品面を向かい合わせる事になる。IPをVIPC310に搭載したまま割込み
 VECTORの設定を行えるよう、ディップスイッチは横向きのものを使用した。

図3
(3)インタフェース仕様と制御回路
 制御回路は、CPUからの命令の解読とVIPC310とのI/Oのタイミングの制御の役目を持つ。
 ここで、VIPC310とIPとのインタフェース仕様のうちで特にロータリエンコーダ・ボードの
  設計に重要なものを記す。

 1)物理インタフェース
  IPの寸法と、コネクタピン番号を図4に示す。50ピンコネクタはAMP社の
    173279−3である。

図4 IndustryPackのサイズとコネクタピン番号
 2)ソフトウェアインタフェース
 IPが可能なデータ入出力のサイクルには、表1に示した8種類がある。
  それぞれのサイクルは4つのセレクト信号
(IOSel*,MemSel*,IntSel*,IDSel*)
 とR/W*、DMAck*により決定される。

  表1 Cycle Types

   すべてのサイクルで4つのセレクトサイクルのうちの1つだけactive
    になる。1つのサイクルは、セレクト信号がactiveになってからIPが
    Ack*を返すまでである。
   図5に、最短の場合のInput、Outputサイクルのタイミングチャートを示す。
   また、図6にタイミングの規定を示す。なお、図6中のIP Carrier
    は、ここではVIPC310の事を指す。

図5 Fastest I/O Cycle

図6 IP Detailed Timing Diagram

 制御回路は、以上のような仕様を満たすように設計しなければならない。
 制御回路では、セレクト信号、アドレス、データなどをデコードしてCPUからの命令を解読し、
  CLKと同期を取り、ロータリエンコーダ信号処理回路やタッチセンサ信号処理回路に必要な
  信号を送ったり、命令に応じたデータをCPU側に返したりする。IPの大きさを考慮して、
  回路をPLDで作製することにした。

 3)コネクタピンアサイン
 表2、3にロータリエンコーダボードのコネクタピンアサインを示す。表2はコネクタJ3
  のピンアサインで、これはIPとVIPC310のインタフェースのコネクタである。
  表3はコネクタJ5のピンアサインで、これはIPとセンサの接続コネクタである。
表2 コネクタJ3
表3 コネクタJ5


 4)センサ接続ケーブルの設計
 ロータリエンコーダ・ボードにロータリエンコーダ、タッチセンサを取り付け
 るためのケーブルを作製する。ケーブルは、表3のコネクタJ5のピンアサインに
 従う。実際は、コネクタJ5はIPとVIPC310の接続コネクタで、センサ類
 はVIPC310のコネクタJAに取り付ける。コネクタJAはIPのI/O用の
 コネクタで、J5と直結しているだけで、コネクタの形状は一般的なフラットケー
 ブル用の2列型のものになっている。
 ケーブルは、50ピンコネクタだが必要な信号線は半分以下である。1ピンか
 ら26ピンまでのGNDは、特に必要ないのでコネクタの根元でカットする事にした。
 1つのケーブルから複数のセンサに分けるのに、本研究ではケーブル分岐用の
 中継ボードは作製せずケーブルをセンサ毎に裂く方法をとった。その理由は、
 中継ボードを作製する事でその中継ボードの取付場所を確保しなければならなくなり、
 ラック収納式である事のメリットが薄れると考えたからである。図7に作製
 したケーブルの外観を示す。

図7 ケーブル外観

(4)ボードの関連ファイル(回路図、作成手順書等)を下に示す。
ロータリエンコーダ・ボード第2版詳細設計書・・・V94ーCARD−102
ロータリエンコーダ・ボード第2版回路図・・・・・V94ーCARD−
ロータリエンコーダ・ボード第2版部品表・・・・・V94ーCARD−302
ロータリエンコーダ・ボード第2版作製手順書・・・V94ーCARD−012
RE_VIPC310接続ケーブル仕様書・・・・・V94ーCARD−009
ロータリエンコーダ・ボード取扱い説明書・・・・・V94ーCARD−011