MIRSのMPUボードを新しくする事によって今までより多くの電流が必要となった。
また、通信機能としてRS−232Cを備えている。このため、従来用いてきた電源制御
ボードが使えなくなった。そのためこれらの要求に対応した、新たな電源制御ボードを開発する。
1−1−1 電源系統図
電源系統図を図1−1に示す。この図にしたがって各ボードに電源を送る。
ここで、このボードが出力すべき電流の大きさについて考える。
まずMPUボードのVSBC−1では750mA、I/OボードのVIPC310は460mA、
IP−digital 48 は220mA消費する。その他の回路によって、1A程流れると
考えられる。これらを合計すると2.43Aである。よって最大電流が3Aで設計する。
図1-1
1−1−2 Power Distribuor ボード機能概要
電源制御ボードは、主に3つの機能を持つ。
各ボードの電源として+5Vの電圧を出力する回路
RS−232Cのための±12Vの電圧を出力する電源回路
MIRSの実際に競技中のみモータと勝敗判定装置を動作させる回路
1−1−3 構成図
図1−2に構成図を示す。図2中の1から3の機能について説明する。
定電圧電源回路 +5Vの電圧を安定して出力できる電源回路を構成する。
RS−232C用電源回路 RS−232Cのための、±12V、100mAの電源回路を構成する。
ON−OFF制御回路 駆動用の電源を、スタートスイッチでON、
勝敗判定装置が押されたことでOFFになるようにする。
図1−2 電源制御ボード構成図
1−1−4 回路設計
1−1−4−1 機能設計
各機能について詳しく述べる。
@定電圧電源
この部分では、MIRS上の全ての回路に電力を供給するための回路である。電源としては、
ラジコン用の7.2Vの充電用電池を用いる。これは、フル充電では、8Vほどまであるが、
そのうち電圧は落ちてくる。通常の定電圧レギュレータを用いると、5Vを発生させる為に
7V近く必要となり、これでは電圧が落ちてきた時に、安定した電力を供給できなくなってしまう。
そのため今回は、抵損失のレギュレータ(最低入力電圧6.0V)を用いる。また、
今回は3Aというかなり大きな電流が必要となり、ここではそれだけの電流を発生させる。
ADC−DCコンバータ
この部分は、RS−232Cを使用するための電源となる。必要な電圧および電流は、±12V、
100mAである。
BON−OFF制御部
この部分では、スタートスイッチが押されたら、勝敗判定装置及びモータに電力を供給し、
勝敗判定装置が押されたら、それらをOFFにするための回路である。ここは、リレーによる
1ビットのデータ保持機能を持つ回路となっている。
1−1−4−2 部品選択
次に特殊な部品について述べる。
@STR9005(サンケン)
この部品は、抵損失リニアレギュレータICと呼ばれている部品である。最低6.4Vの入力電圧
を5Vの出力電圧にする。また、最大出力電流も4Aであり、今回の規格に適当である為、使用する。
ASQ−12D−250(アジア電子)
この部品は、DC−DCコンバータと呼ばれる部品である。入力電圧は4.5V〜9Vなのでバッテリー
をそのまま入力しても安全である。出力も±12V、100mAで、今回の規格に適当である。
B放熱板(HEAT1.ZWD)
この部品は、STR9005の仕様書から計算して寸法を決定した。
今回の使用条件は、以下のような場合を考えた。
入力電圧:8V〜6V
出力電圧:5V
出力最大電流:3A
周囲温度:25℃
これらの条件から、損失電力の最大値は、
3[V]*3[A]=9[W]
である。放熱板の面積と、損失電力の関係は、図3−3のとおりである。よって、必要な放熱板の面積
は、5625[cm2]となる。
図1−3 Ta-Pd特性
今回は部品の関係でPower Distributorボードを2種類作った。2種類の基板はサイズやピンアサイン等
の性能は等しい。しかし、基板の形や放熱板に違いがある。来年から使用する時は、自分たちの使いたい
ほうを使って欲しい。以下に2種類の基板の違いを述べる。
なお、2種類の基板の名前はそれぞれPower Distributor/1、Power Distributor/2である。
@Power Distributor/1
基板全体が比較的薄い。
特殊な部品が少ない。
APower Distributor/2
部品点数が少ない
放熱板を既製品を使うので作るのが比較的容易である。
1−1−5 ソフトウェアビジビリティ
本ボードのコネクタのピンアサインについて述べる。
コネクタ1,3
コネクタ2
コネクタ4
コネクタ5
コネクタ6
←はボードへの入力、→はボードからの 出力、--は方向が無いことをあらわす。
1−1−6 回路実装
基板配置図を図1−4、図1−5に示す。
図1−4 基板配置図(Power Distributor/1)
図1−5 基板配置図(Power Distributor/2)
コネクタの品名
CN1:MOLEX(53259-0220):9.1 × 14.2 (mm)
CN2:MOLEX(53259-0220):9.1 × 14.2 (mm)
CN3:MOLEX(53259-0220):9.1 × 14.2 (mm)
CN4:MOLEX(53259-0420):16.1× 14.2 (mm)
CN5:MOLEX(5046-04A) :9.5 × 13.3 (mm)
CN6:MOLEX(5046-03A) :7.0 × 13.3 (mm)
このボードはVMEラックに直接搭載する事を考えて作られている。次に、VMEラックへの搭載方法について示す。
固定用のアルミ板を基板のねじ穴に取り付ける。VMEラックの裏のねじ穴に図3−6のように固定用のアルミ板を固定する事で基板を固定する。
図1−6 取付実装図
勝敗判定装置
これまでのMIRSでは自分の存在を示すために、勝敗判定装置に豆電球を使用してきたが、
実際に競技をする際、太陽や蛍光燈の光による誤動作が多かった。そのような弱点を克服するため、
豆電球の光にかわり赤外線を用いることとなった。それに合わせて、勝敗判定装置も新たに開発する。
1−2−1 勝敗判定装置機能概要
勝敗判定装置は、2つの機能を持つ。
相手MIRSに押されたことを感知する機能。
自分の存在を示すための機能。赤外線LEDを用いる。
但し赤外線LEDだけでは、人間が見てわからないので、通常のLEDも取り付ける。
1−2−2 構成図
構成図を図3−7に示す。図2中の1から3の機能について説明する。
勝敗判定用スイッチ ここを押された時、そのことを電源制御ボードに伝える。
LED発光回路 通常のLEDを発光させる。
赤外線LED発光回路 赤外線LEDを、パルスによって発光させる。
図2 勝敗判定装置構成図
1−2−3 回路設計
1−1−4−1 機能設計
各機能について詳しく述べる。
@勝敗判定用スイッチ
この部分は、相手MIRSに押された事を感知するための装置である。回路としては、
ノーマルコネクトのスイッチの用い、押された事によってこのスイッチが切られた時に
そのことがPower Distributorボードに伝わるようになっている。
ALED発光回路
この部分は、通常のLEDを発光させるための回路である。赤外線は人の目には見えないので、
この機能をつけた。
B赤外LED発光回路
この部分は、赤外線LEDを発光するための回路である。今回使用した赤外線受光素子IS1U60は、
38kHzでパルス発光された赤外線しか受光しないものである。この事は、
余分な赤外線を遮断する上で大切な機能である。しかし、そのため、38kHzでパルス発光
しなければならない。また、この受光素子は、38kHzでパルス発光された赤外線でもずっと
発光され続けているものはノイズとみなしてしまう。そのため、さらにこの赤外線を600μs
で変調する。これらの発振回路はタイマICのμPD5555を用いている。また、赤外線LEDの
ドライバICとして、SN75453(デュアルぺリフェラルORゲートIC)を用いた。
1−1−4−2 部品選択
次に特殊な部品について述べる。
@TLN105B(東芝)
この部品は、赤外線を発光するために使用した。この素子の特性を以下の示す。
最大定格(Ta=25)
(注)パルス幅≦100μs,繰り返し周波数=100Hz
電気的特性(Ta=25℃)
波長特性(標準値) (IF=50mA,Ta=25℃)
図1−8 波長特性
指向特性(標準値)
(Ta=25℃)
図1−9 指向特性
1−2−4 ソフトウェアビジビリティ
本ボードのコネクタのピンアサインについて述べる。
←はボードへの入力、→はボードからの出力、--は方向が無いことをあらわす。
1−2−5 回路実装
基板配置図を図1−8に示す。
図1−8 基板配置図(勝敗判定装置)
コネクタの品名
MOLEX(5046-04A):9.5 × 13.3(mm)