総合試験計画

MIRSの性能を知る手段として、総合試験は欠かすことができない。ここでは、その総合試験の手順を検討する。

総合試験は、大きく次に分けられる。

(1)部分機能試験
MIRSが電源投入から、走らせるまでの過程で正しく動作しているかどうかを調べるために行われる試験である。内容は以下の通り。

(i) 電源投入
各配線等の検査を終えたらいよいよ電源投入にはいる。電源投入は検査の段階で最も重要な部分である。電源を入れた途端、突然モーターが回転しMIRSが急発進するかもしれないので十分注意する。

準備がすんだら電源を入れる。電源を入れた後、変な音や臭い、煙などが発生した場合は直ちに電源を切る。

そのような異常もなく無事に電源が入ったら、まず電源電圧のテストをする。テスターなどを用いて規定の場所に規定の電圧がきているかを調べる。特にCPU周りは故障の原因となりやすいのでよく注意する。また電流が流れすぎていないかも調べておく。

(ii) 赤外線LEDの発光検査
電源を投入したら、まず本体後面の赤外線LEDが発光しているかを調べる。赤外線は人間の目には見えないので、電流計などで調べる。LEDに規定の電流が流れていればLEDは発光している。また、オシロスコープやロジックアナライザなどを用いて、指示されたパルスで発光しているか調べておく。

(iii) MMIボードのチェック

次は、MMIぼーどを検査する。7セグメントLEDが発光しているか単色のLEDは発光するか、また0000−9999までの数字が表示可能かを調べておく。

(2)単純走行試験
MIRSの基本的な駆動性能を調べるために行う試験である。

内容は次の通りである。

(i)直線定速走行試験
電源投入で異常が認められなかったときは、走行の基本である「直線定速走行」を試験する。

まずMIRSを凹凸のない水平な場所に置き、10mほどの直線上を、およそ0.3m/secで定速走行させる。このときに、異常な音がしないか、極端な速度の変化がないか、またモータから臭いや煙がでていないかを調べる。さらに、10m走った時点で左右へのズレが±20cm以内に収まっているかをチェックする。

(ii)直線高速走行試験
次は、いわゆる全速力走行の試験である。調べる項目は「直線定速走行試験」と同様であるが、更に設計上予定していた最高速度(1m/sec)に達しているかを調べるものとする。なお、その際にはストップウォッチ等を用いる。

(iii)円走行
円走行では、一定速度でおよそ半径50cmの円周上を10周以上走行させる。このときに中心が大きく変わっていないかを調べる。

(iv)屈折走行
屈折走行は、MIRSを屈折(直角カーブ)したライン上を走行させ回転角が90度になっているか、機敏に曲がることができるかをチェックする。

(v)8の字走行
MIRSを8の字に沿って走らせる。円走行の時と同様に極端な中心位置の変化がないかをチェックする。

(vi)回転
最後は、その場回転の試験である。その場でMIRSを10回転以上回転させ回転の中心が極端にずれていないかを調べる。

(3)リモート走行試験
ここでは、リモートコントロールを使用した試験をする。別に制作したリモートコントロール用の外部端末を接続して、外部端末の指示通りに行動するか、機敏に行動しているかをチェックする。行動の内容は、先の単純走行試験の試験項目と同じとする。

(4)センサー性能試験
最後はMIRSのセンサー部の性能を試験する。このときに、MIRSが適切な危険回避などの処置が行われるかもあわせてチェックする。まず、センサーには、

があり、それぞれをチェックする。

(i)超音波センサー
まずは、超音波センサーの性能を調べる。このときは、マンマシーンインターフェースやリモートコントロール用の外部端末によって超音波センサーで測定した距離が分かるようにする。そして、測定した距離が実際の距離の±10%以内におさまっているかを調べる。

(1)距離測定試験
障害物を、超音波センサーの設置してある方向に置き、

LEDに表示される測定値が、実際の距離の±10%以内におさまっているかを調べる。

(2)障害物反応試験
走行中に障害物をフィールド上に置き、その障害物を

捕捉又は回避できるか調べる。

(3)修正判定試験
MIRSをフィールド上に置き、壁との距離を測定させ

修正モードにおいて測定精度が充分であるかを調べる。

(ii)赤外線センサー
赤外線センサーも同様に、マンマシーンインターフェースなどで取得した情報が視覚的に評価できるような装置を使う。赤外線センサーは on/off の状態、や指向性などをチェックする。

(1)静止状態における赤外線反応試験
MIRSを静止させ、赤外線センサーに赤外線を当て、

ロジックアナライザー等で信号が正しく出ているかを

調べる。

(2)走行状態における赤外線センサー試験
MIRSを走行させておき、(1)と同様に赤外線を当て

正しく行動するかを調べる。

(3)赤外線追跡モードの試験
MIRSの前方で、赤外線LEDを移動させ、正しく

追跡するかを調べる。

(iii)タッチセンサー
タッチセンサーもチェックする。まず、押した感覚で無理に他の部分への力がかからないかを十分にチェックしておく。そして、左右ともしっかり認知するか、また危険を認知したときに適切な回避行動がとれるかをチェックする。

(1)静止状態におけるタッチセンサー反応試験
MIRSを静止させ、タッチセンサーを押し、ロジック

アナライザー等で信号が正しく出ているかを調べる。

(2)走行状態におけるタッチセンサー回避試験
MIRSを走行させ、故意に壁に接触させ正しく回避

出来るかどうかを調べる。

(iv)勝敗判定装置
「勝敗判定装置」は実際にはセンサーではないが、負けたことを調べるという点では一種のセンサーともいえる。

この場合、押した感触が重すぎないか軽すぎないか、また実際に走行させ押されたときに直ちに停止モードにはいるかどうかをチェックする。