近年、ものづくり教育としてロボット製作の重要性が増しており、様々な教育機関で実施されています。ロボットを製作することで、専門科目や技術を実践的に活用し、問題解決に至るまでを体験することで、学生の更なる知識・技能の向上へ貢献しているといえます。
　このような取り組みの代表例として、「ロボットコンテスト」が挙げられ、先進国をはじめとする世界各国で開催されています。最近では途上国にも波及し、2008年にはアフリカ・ケニア共和国で初めてのロボットコンテストが開催されました。しかし、このコンテストでは今後改善したい課題として参加校の基本的なロボット開発技術の不足が挙げられました。

このような背景の下、ケニア共和国でのロボットコンテスト開催を提案したJICA（独立行政法人 国際協力機構）より、沼津高専電子制御工学科に対し、今後開催が予定されているコンテストに向けた技術協力の要請がなされました。これより大庭研究室では、卒業研究のテーマの1つとして競技動作を実現する実演用ロボットを開発し、そのロボットを用いてケニア共和国の学生・教員と意見交換を行うことで技術協力とすることとなりました。

2009年8月には、JICAの協力の下行われたケニア共和国教育関係者による本校視察において、開発した実演用ロボットを用いた説明が行われました。この際、実演用ロボットは試作段階であったため、簡易的なアームをシャーシ上に実装して実演を行いました。また、本学科がカリキュラムに取り入れている小型自律移動ロボットやロボット開発に使用した工作機械・マイコン教材などについても説明が行われました。

2010年にはJICAの支援の下、本研究室の専攻科生が実際にケニア共和国へ渡航し、8月21日〜9月4日の約2週間の滞在中にケニア共和国高等教育省をはじめ、各地域の大学や職業訓練学校など計6校へ訪問しました。各学校では開発したロボットの実演やプレゼン資料を用いた解説を通じて、本学生と現地の学生・教員の方々との間でロボット開発に関する意見交換が行われました。

開発した実演用ロボットは、「PIC」と呼ばれるマイコンを用いた制御や、「CAD/CAMシステム」を使用して加工したプリント基板を制御回路としています。これらは、電子制御工学科の2年生と3年生がそれぞれの実験で学習するものです。このように実演用ロボットは、電子制御工学科で学べる要素が含まれているため、教材として改良を行うことで本学科の工学実験へ応用教材として導入し、授業の高度化を図ることも可能であると考えられます。

従来の工学実験で取り扱っていたLEDやブザーは「PIC」による出力制御のみでしたが、本教材は赤外線センサによる検知機能やDCモータを用いた駆動機能、さらに表示器としてLCDも装備されており、実験受講生の学習意欲の高揚を図っています。また、各種要素の制御を組み合わせ統合することで、マイコンを用いた実践的な学習が行えます。