アトラクタ(Attractor)

     アトラクタとは


 古典力学では、初期条件と運動方程式さえわかれば無限の未来まで予測できるはずであった。しかし、物理現象では小さい初期条件での違いが無限に増幅されて、まったく予測不能な混沌状態に陥ることが少なくない。このような無秩序な振る舞いをカオスという。わかりやすい例を上げよう。
 西暦1990+n年の人口密度をp_nとする。その後1年間の人口密度の増加p_(n+1)-p_nは、現人口密度p_nに比例すると同時に、最適人口密度p_optとの差p_opt-p_nにも比例すると仮定しよう。以下ではp_opt=1となるように単位をとる。比例定数をk(>=0)とすると、上述のことは漸化式


p_(n+1) = p_n + kp_n(1-p_n)


 で表わされる。この仮定によれば、人口密度が1を超えれば人口は減少に転じることになる。この種の式をロジスティック方程式という。
 初期人口密度p_0を0 k = 2.5になると、今度は四つの値1.225,0.536,1.158,0.701を順にとるようになる。さらにkを少しずつ増していくと、n→∞でのp_nの値はどんどん分岐(Bifurcation)、ついには規則性が見えなくなる。このような無秩序な振る舞いがカオスである。また、アトラクタはぼやけて広がりをもつようになる。このような広がったアトラクタを奇妙なアトラクタ(Strange Attractor)という。


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