沼津高専 電子制御工学科
MIRSATLM モータパワー制御技術資料
MIRSATLM-TECH-0002
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A01 2001.1.23 川端 長澤 初版 MIRSATLM
  1. はじめに

     このドキュメントはMIRSATLMのモータパワー制御についてまとめた技術資料である。

  2. モータパワー制御の概要

     MIRSのモータパワー制御は大きく分けて2つの部分から構成される。一つ目は、モータの回転数、方向の命令をISAバスから受けてその信号を速度信号と方向信号に変えてモータパワー制御ボードに送る部分でFPGAボード内に形成される。もう1つは、その信号をアナログ信号に変換して実際にモータを駆動させるモータパワー制御ボードである。そしてこの二つはドーターボードを介して接続されている。モータの制御方法としては、PWM制御というものを採用している。

  3. MIRSの回路構成


    モータパワー制御の流れ

     fig.1にモータパワー制御の制御の流れを示す。MIRSでは2つのタイヤの回転方向、速度を変えて制御を行っている。そのため、それぞれ必要なデータとして極性(方向データ)・回転数(速度データ)がある。方向データは1bit(正転・反転)で、速度データは7bit(128段階)である。左右モータの速度・方向データはISAバスからの指定される。これを受け取り、FPGAボードのモーターパワーモジュールでは、内部の7bitカウンタの値と速度データを比較することによって速度を制御する最大Duty100%のPWM信号(パルス)を作り出している。また、方向信号は、残りの1bitをそのまま出力をしている。ここで気をつけなければならないのは、PWM信号、方向信号ともにオープンドレイン出力であるということである。これは、モータを扱うためモータの雑音が入らないようにGNDをモータパワー制御ボードとFPGAボードを別にしているためである。そのため、モータパワー制御ボードの最初には、フォトカプラを使用してGNDを使わないようにしている。また、このためドータボードではモータパワー制御ボードのLED駆動用の抵抗330Ωが必要となる。そして、モータパワー制御ボードでは、送られてきたデジタル信号をモータ駆動用のアナログ信号に変換してモータに送っている。また、モータパワー制御ボード上でモータに流す電流の向きを方向信号にしたがって変換させることによって方向の変換を行っている。

  4. PWM制御について

    1. PWM制御とは
       PWM(Pulse Width Modulation)とは振幅を一定にしてパルス幅を変化させるパルス制御法の一種(発展形)である。パルスの前縁と後縁の両端を等しく変化させる方法とどちらか一方(普通は後縁)を変化させる方法の2つがある。
    2. 原理
       DCモータの場合、モータのトルク(回転力)は供給電圧の変化(電圧比)で制御されのが一般的である。しかし、この方法ではモータのトルクは電源がおちてくればその影響を受けてトルクが弱まってくる。そのため、MIRSのように電源を内部の電池のみにたより、電力消費量が多い自律移動ロボット等にはあまり適さない。

      fig.1 モータの接続図

       MIRSでは、fig.1のようにモータと電源とスイッチをつなぎ、スイッチのON OFFでモータを動かす方法を使う。電源電圧を一定にして、スイッチの方を連続的に切り替えることによって、速度が上がりきる前に電力の供給が止まり、減速しきる前に電力の供給が再開する。ON OFFの間隔を調節すれば、モータのトルクを制御できる。このように慣性を使い、オンパルスの通電幅を変化させることによって、結果的にモータへの供結エネルギーをコントロールする制御を行う。これをPWM制御という。
    3. 実際の回路

      fig.2 実際の回路図

       実際にはスイッチのON OFFではなくて、トランジスタで制御している。またMIRSの場合FPGAボードからの入力信号の大きさに応じてPWM信号が形成されている。fig.2がMIRSのPWM制御の概略図である。回路中のダイオードがあるこれは、PWM制御などのパルス制御法は、電力パルスがonの時だけモータ電流を流していて、電力パルスがoffのときはモータ電流は流れない。したがって、OffTimeとOnTimeではトランジスタ等の負担に差が生じる。また、コイルにはインダクタンスがあるため自己誘導作用が発生し、大きな逆起電力を誘発する。これは、制御用トランジスタを破壊するだけでなく、非常に大きな雑音を周囲に巻き散らし、ひいては大きな電磁波被害となる。これを解決したのがダイオードD1で、一般にこれをフライホイールダイオードと呼んでいる。この働きは、モーターオフ時に誘発する逆方向の電力をダイオードを介して同じモータに回生してやる事である。こうすることによって、高レベルの電気雑音が抑制されるだけでなく、そのエネルギーをオフタイム中、モータに流す事が出来るので、モーター電流が連続的となり、その結果エネルギー効率が上がり、なおかつモーターの動きもスムーズになる。
    4. Duty比
       デューティー比とはキャリア周期に対するオンタイムの比のことである。この比率を変えることによってモータへ供給する平均電流を変化させ、モータの回転数を制御する。現在の仕様ではMIRSのDuty比は0%〜100%で指定できる。しかし、今回のMIRSではブレーキ機能がついていないので、Duty比と回転数の関係が線形にならない。実際のDuty比と回転数の関係を以下のfig.3に示す

      Duty比と回転数の関係

      また、Duty比とパルス幅は以下のように求められる。
      T[ns]=n×12.5[ns]

      D[%]=n/127×100

      0≦n≦127
  5. 各種基本仕様
    モータはmaxon社製のエンコーダ、ギヤ一体型のモータを使用する。各仕様を述べる。ロータリエンコーダについては、ロータリエンコーダ技術資料(MIRSATLM-TECH-0002参照。

    1. モータ

      定格出力20[W]最大連続トルク24.45[mNm]
      公称電圧18.00[V]公称電圧時最大出力55200[mW]
      無負荷回転数10200[rpm]最大効率83.2[%]
      停動トルク219[mNm]トルク定数16.3[mNm/A]
      回転数/トルク勾配48.1[rpm/mNm]回転数定数585[rpm/V]
      無負荷電流53.9[mA]機会的時定数4.63[ms]
      起動電流13400[mA]ロータ慣性モーメント9.19[gcm2]
      端子間抵抗1.34[Ω]端子間インダクタンス0.12[mH]
      最大許容回転数11000[rpm]熱抵抗(ハウジング/周囲間)14.00[K/W]
      最大連続電流1500[mA]熱抵抗(ロータ/ハウジング間)3.10[K/W]

    2. ギヤボックス

      プラネタリギアヘッド直線歯
      ベアリングボールベアリング
      ラジアルがた
      (フランジから15mmの点)
      0.02mm
      スラストがたmax.0.05mm
      最大許容スラスト荷重49N
      最大許容挿入力49N
      平均バックラッシュ(無負荷時)/段<0.5°
      水奨入力回転数6000rpm
      使用温度範囲-20/+80℃
      段数
      1段2段3段4段
      176N176N176N176N
      85%76%64%58%
      最大許容ラジアル荷重
      (フランジから12.5mmの点)
      効率

      減速比16:1
      段数2
      最大トルク連続0.98N
      断続2.25N
      回転方向=
      重量90g


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