沼津高専 電子制御工学科
MIRS9903ロータリーエンコーダ調査報告書
MIRS9903-TECH-0009
 
改訂記録
版数 作成日 作成者 承認 改訂内容 提出先
A01 2000.1.31 菊池 菊池 初版  

第1章 はじめに


1.1 ロータリーエンコーダについて

  製品にコネクタを接続し、タイヤの回転数(アナログ量)をパルス数(デジタル量)に変換する機能がある。その変換方式には光電式、ブラシ式、磁気式などがあるが、MIRSでは最も一般的な光電式を使用する。ロータリーエンコーダは、回転軸の回転速度に比例した互いに90°位相の異なる2相の近似正弦波を出力しているもので、2相の位相関係から回転方向が判別できる。他に、2相の信号をカウントして回転数を求めることができる。
 一般的なロータリーエンコーダの使用方法として、回転子の回転数や速度の検出がある。

第2章 光電式ロータリーエンコーダの概要


2.1 回転量の検出

 発光ダイオード(LED)と受光素子(フォトトランジスタ)が、回転軸に取り付けられた回転スリット(A)と固定スリット(B)をはさみ相対して取り付けられている。回転スリット(A)が回転すると、ダイオードの光がスリットによって通過、遮断を繰り返す。この光を受光素子により検出して、信号(パルス)に変換する。出力信号を2相にするため、固定スリット(B)のスリットは2つで、90°位相がずれている。
 
光電式ロータリーエンコーダの概要      
fig1.光電式ロータリーエンコーダの概要

ロータリーエンコーダからの出力信号aは近似正弦波形であるので、これを波形整形回路でパルス波形bにする。 

パルス       
fig2.パルス
  

2.2 回転方向(正転/逆転)の判別

 波形整形回路からのパルス信号A,Bの組み合わせには、回転方向により2つのパターンがある。  
パルスパターン       
fig3.パルスパターン
 

 上記のように出力信号A,Bの位相差は常に90°であるが、回転方向により、ずれ方が異なってくる。
@の場合、B信号の立ち上がり時にA信号は必ず”H”になっているため回転方向検出信号は”H”になる。
Aの場合、B信号の立ち上がり時にA信号は必ず”L”になっているため回転方向検出信号は”L”になる。
このようにして回転方向の判別を行う事ができる。

2.3 回転速度の検出

 A、B信号の周波数は回転数に比例するからBのパルスを一定時間間隔にカウントし回転数を求めれば、回転速度を検出できる。データの読み込みはタイマー割り込みを使い、そのたびにカウンタはリセットされる。

第3章 パルス弁別回路


3.1 パルス弁別回路

 2相パルス出力型のエンコーダ(正転/逆転)を検出するために必要な回路である。通常このA、B相の動きによってup/downパルスを作り出し、必要桁数のup/downカウンタに入力し、カウンタの内容を読み取って回転量を知る事ができる。パルス弁別回路は、このup/downパルスを作り出す回路である。 
fig4.パルス弁別回路
  

第4章 信号処理のブロック


4.1 信号処理のブロック

 
fig5.信号処理のブロック
 

4.2 カウンタ回路

  カウンタ回路はロータリーエンコーダの信号をカウントし、2相の信号の位相差から回転方向を判断する。今まではフリップフロップを使ってカウンタと方向判別回路を設計してきたが、ここではマウス制御用カウンタIC(μPD4701A)を利用する。μPD4701Aを利用することのメリットを、次に挙げる。
  • μPD4701Aがカウンタと方向判別回路の両方の回路を兼ね備えているということ。これにより、カウンタ、方向判別回路の信頼性は高上する。
  • 2相式のロータリーエンコーダを2つまで取り付け可能であるということ。μPD4701Aを利用すればIC1チップで2つのロータリーエンコーダの信号処理ができて、回路の小型化が簡単にできる。回路の小型化については、ボードをIndustryPackの形態にするためにも重要になる。
  • μPD4701Aが2相でカウント動作をするということ。今までは、ロータリーエンコーダの2相の信号のうち、片方の相のパルスの立ち上がりに対してカウンタをアップカウントさせ、方向はカウントとは別に2相の位相差から判別していた。それに対して、μPD4701Aのカウンタは2相のパルスの立上がり、立下がりの全てに対してカウンタを動作させる。そのため、ボードの分解能はこれまでの4倍にまで高めることができる。ちなみにカウンタは2の歩数表示で2相の位相差から常に方向を判断し逆転の時にはダウンカウントする。
  • μPD4701Aの持つマウスのボタン入力ピンをタッチセンサに応用できるということ。簡単に言うと、パルス信号Aをカウンタとした時にI/Oポートは8ビットあるが、1ビットを回転方向を示すのに使うので残る7ビットを使いカウンタを作る。なお、リセット信号によりリセットされる、ということである。
  •  
    fig6.カウンタリードサイクル
      

    4.3 カウンタリセット回路

      カウンタリセット回路は、カウンタのリセット信号を発生させる回路である。
    μPD4701Aの2つのカウンタは独立にリセット機能を持つため、回路も2つのカウンタを別々にリセットできるようにする。 
    fig7.カウンタリセットサイクル
      

    4.4 ロータリーエンコーダ接続回路

      ロータリーエンコーダ接続回路はロータリーエンコーダの出力波形が論理回路の“H”、“L”レベルを満足するように振幅を設定するためのものである。この回路は使用するロータリーエンコーダに合わせて設計する必要があるが、本研究ではこれまでのMIRS開発に用いられてきたロータリーエンコーダと同じものを使用するため、ロータリーエンコーダ接続回路は新しく設計する必要はなく、これまでのものをそのまま用いることができる。fig8.にロータリーエンコーダ接続回路を示す。 
    fig8.ロータリーエンコーダ接続回路
      

    第5章 マイクロエンコーダ


    5.1 マイクロエンコーダの仕様

     MIRSでのマイクロエンコーダは、maxonのモータと一体化したものである。 
    テクニカル・データ
    供給電圧  5V(-10/+10%)
    出力信号  TTLコンパチブル
    立ち上がり時間  200ns
    下降時間  50ns
    チャンネル数  2
    カウント/回転  100
    使用温度範囲  -20/+85℃
    コード・ホイール慣性モーメント  =<0.05gcm2
    最大加速度  250000rads-2
    最大出力電流/チャンネル  5maA
    位相差  90°e(-45/+45°e)
    最大周波数  20kHz
     
    Last up date is 98/12/14