沼津高専 電子制御工学科
超音波センサ
調査資料
MIRS9903-TECH-0002
改訂記録
版数 作成日 作成者 承認 改訂内容 提出先
A01 1999.1.30 伊藤 小杉 初版

超音波センサの調査結果

(1)超音波の性質

・超音波というのは、人間の可聴範囲以上(約16KHz)の音波をいう。我がMIRSにおいて、障害物の検知・距離測定と自機座標の確認をするセンサが超音波センサである。今回MIRSで使用する超音波センサは反射方式(独立型)を採用している。

・超音波は音であるから常温の空気中を約340[m/s]という速度で伝播する。従って、音は1[cm]距離を約28[μsec] だけの時間をかけて進む。すなわち超音波を発射してから物体に反射して戻ってくる迄の時間を測定すれば,超音波の送受波器から物体までの距離を知ることができる。(図 1)超音波を発射してから,反射波が検出されるまでの時間をT [μsec]とすると、壁までの距離dは

d = 0.5T * 340 * 0.001 = 0.17T [mm]

で計算された。

・温度の影響に対して空気中の音波伝搬速度vは簡易的に次式で表される。

v = 331.5 + 0.607T [m/s] T : 周囲温度 [℃ ]

・つまり、周囲温度によって音速が変化するので物体迄の距離を常に精度よく測定するには温度補正が必要となる。

・硬い物(金属、木材、コンクリート、ガラス、ゴム、紙など)は超音波をほぼ 100% 反射するのでこれらの物体の有無は十分検知することが出来るが、布、グラスウール、綿、の柔らかくて空気を含んでいる物体は超音波を吸収するため物体の有無を検知し辛い。

・物体の表面の起伏が大きい場合超音波が乱反射するため検知しにくいことがあるので、注意が必要である。

(2)超音波センサーの構成


図 1の構成による各部の波形の例が図 2である。実際には反射波は物体の形によりエコーして残るが、この回路では反射波の先頭だけを検出して、最も近い所からの反射時間をはかる。図 1では発振器を使用しているが発振波形でなく一発の高圧パルスで超音波スピーカを駆動することもある。まわりこみ波はコンパレータによって受け付けないようにもできるが、更に計測禁止期間を設けるかどうか検討すべきである。


図1 超音波センサの構成


図2 超音波波形とタイミング


(3)空中超音波センサーMA40S2R/Sの諸特性

超音波センサーMA40S2R/Sはまとめたものである。また、センサーの公称周波数が40KHzとなっているが、これは素子部の中心周波数であり、実用に際しては送信時は直列共振と並列共振の中間点で、また受信時は並列共振周波数で、それぞれ使われている。下の表1は超音波センサーMA40S2の諸元である。
 
(表1)
品名MA40S2RMA40S2S
項目受 信 用送 信 用
公称周波数40KHz40KHz
感度・音圧−74dB以上100dB以上
帯域幅6KHz以上(−80dB)7KHz以上(90dB)
静電容量1600pF1600pF
絶縁抵抗100MOhm以上100MOhm以上
温度特性−20− +60 C
において感度。
音圧の変化は
ー10dB以内
−20− +60 C
において感度。
音圧の変化は
ー10dB以内

(4)I/OSubボードのポート割り当て(インタフェース)

下の表2に超音波センサ(PI/T2)を示す。

(表2)
論理名 R/W DATA 内容
D7D6D5D4D3D2D1 D0
PGCR2 W 00111000 portをモード0に設定、H1,H3をenable
PACR2 W 00100000 portAをサブモード00に設定
PADR2 R --**---- 折返しセンサ選択信号
R -----*-- アンダーフローデータ
W ------** 超音波センサ選択信号
PADDR2 W 00000011 方向を設定 ("0"=input,"1"=output)
TCR2 W 1011001* タイマを設定 (D0が"0"でHalt、"1"でenable)
CPR2 W 00011110 カウンタの設定値 (T)
CPR2+0x2 W 01100101 カウンタの設定値 (H)
CPR2+0x4 W 01111101 カウンタの設定値 (M)
CPR2+0x6 W 10000000 カウンタの設定値 (L)
CNTR2+0x2 R ******** カウンタ値 (下位)
CNTR2+0x4 R ******** カウンタ値 (中位)
CNTR2+0x6 R ******** カウンタ値 (上位)

(5)超音波の指向性と反射特性

超音波は、トランジューサから一定の広がりを持ってビーム状に発射される、そのビームの形状を超音波トランジューサの指向性と言う。市販されている超音波トランジューサの指向性は、それ程鋭くなく、半値角として 20°〜 30°程度の広がりを持つ。超音波センサの指向性が広いと、センサによって計測された対象物体の形はかなりボケたものになる。すなわち、超音波センサは、距離方向の分解能はよいが、横方向の分解能はよくない。この指向性を改善する方法として、トランジューサにホーンアンテナを取り付ける手段がある。アンテナには一般に指向性を鋭くすると同時に、中心方向のゲインをかせぐという利点がある。指向性を鋭くすることで、進行方向、垂直方向の距離を正確に測定できると思われる。

図4−1 紙性ホーンアンテナの例


図8−2 超音波の指向性

超音波センサには電気信号を超音波に変えて空気中に発射する超音波スピーカ(送波器)と、空気中を伝搬してきた超音波を受けてそれを電気信号に変える超音波マイクロホン(受波器)部とがある。この両者をあわせて超音波トランスジューサーという。超音波トランスジューサーのように電気信号を機械的振動に変えたりその逆をする電気−振動変換素子は、原理的には一つの素子が送波器にも受波器にもはたらかせることが出来る。しか し、送波と受波では空気の振動振幅が大幅に異なり、またインピーダンスを変えた方が効率がいいので実際はほとんど送波器、受波器で別個の素子を用いている。
超音波のような波が対象物に当たった場合、対象物が凹凸のある表面を持っていたとするならば、超音波は散乱しあらゆる方向に反射波が進んでいく。しかし鏡面を持っていたとすると入射角と反射角の関係から反射波は反射角の方向にしか観測されない。センサに対して斜めの鏡面は観測されにくいと思われる。まして相手 MIRS を検出するのはさらに難しいであろう。試作品を製作し、実験をする必要があると思われる。超音波にとってどの程度までが散乱面なのかは波長λから知ることが出来る。以下にその関係式を示す。

v = λ f

ここで 20 ℃の空気中の音の伝搬速度を求めると、

v = 343.5

超音波の周波数を 40 KHz として波長 λ を求める。

λ = v ÷ f = 343.5÷ 40 K = 8.6 [mm]

以上の結果により、対象物の凹凸が約 8.6 [mm] 以上の場合には散乱面とみなされる。

(6)超音波センサの定格

下の表3に超音波センサの定格を示す。
(表3)
構造送信・受信専用
(R:受信用 S:送信用
品名MA40B5R/S
特徴凡用・広帯域
公称周波数/TD>40kHz
感度−47dB以上
音圧112dB以上
指向性(半域全角)0°
静電容量2000pF
分解能
検知距離0.2〜6.0m

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