沼津高専 電子制御工学科
I/O SUBボード
MIRS9805-TECH-0009
改訂記録
版数 作成日 作成者 承認 改訂内容 提出先
A01 1998.12.11 大野

I/O subボード

概要
I/OSUBボードは、超音波センサ回路PWM回路赤外線センサ回路 の3つの回路を搭載した回路である。


超音波センサ回路

1、超音波センサ回路
図.1 超音波センサ回路構成


 超音波センサ回路の機能は大きく分けて二つある。トリガが送られて来ると周波数40[kHz]の矩形波を0.4[ms]の間、送信回路に出力する機能と、受信信号を受け取ると割り込み要求信号をMPUに送る機能の二つである。また、正しく距離計測を行うために、回りこみ波を無視する機能も備え付けられている。
 距離計測はタイマのカウンタ値を読む事で行う。このタイマは、トリガを受け取ってから受信を感知するまでの間回し続けるのでカウンタ値と音速より障害物迄の距離を知ることができる。
 距離の計測に用いるカウンタはPITに内蔵されているタイマを利用している。タイマのクロック周波数は8×106/32[Hz]であるので、障害物までの距離Lは
    L=Count×(8×106/32)−1×v×(1/2)
    * L:距離 v:音速 Count:カウント値
で与えられる。最後の1/2は、超音波が障害物までの距離を往復するので、そのことを考慮して付け加えられている。しかしながら、音速vは一定値ではなく、周囲の温度で変化するため、この方法では、ある程度の誤差は覚悟しなければならない。
 昨年度までの基板は、超音波送受信回路部、カウンタ部などを1枚の基板に搭載していたが、このボードではこの2つの回路を基板上から切り離すことによってボード自体の小型化を実現した。
 また他にも動作の安定のためタイマーICのかわりにPLD内蔵のカウンタで一定時間Hレベルのパルスを作り出すようにした。
 回り込み波を除去する為に従来の比較回路に加えて一定時間受信を完全に無視する機能をつけた。
 従来では4つあった比較回路を1つにまとめたという特徴がある。
 この回路は、構成図にも示されているような、発振回路、ワンショット回路、比較回路の他にも、タイマ制御部、基準電圧発生部など様々な回路が複雑に組み合わさっている。これについての説明と、取扱上の注意を述べていくことにする。

2、発振回路
 この回路はコンデンサの放電を利用し、ゲートと組み合わせて構成した簡単な発振回路である。超音波センサ回路のメインクロックともなる重要な回路だがこの方法で正確に40[kHz]の周波数を作り出すことは難しい。また、ICにCMOSを使用しているので、回路自体がデリケートなこと、コンデンサの放電を利用しているので、少しの状況の変化(接触や、端子の先のRの値)によって、発振したりしなかったりと言うこともある。中央の抵抗値によって周波数が変化するので、最初は可変抵抗で抵抗値を変化させながらオシロスコープで、周波数を調べ丁度40[kHz]の周波数を示した時、その時の可変抵抗の抵抗値にできるだけ近い値(約 5.6kΩ)を持つ抵抗を付けた。

図.2 発信回路


3、ワンショット回路
 図.3にPLDにプログラムされたワンショット回路構成図を示す。又、タイミングチャートを図.4に示す。ワンショット回路は、64進カウンタと制御回路で、構成されており、PLDを2つ使っている。 この回路から、トリガ一回毎に、ガードパルス、タイミングパルス、送信用ワンショットを一回づつ出力する。送信用ワンショットとCLKとのANDをとって幅0.4[ms]、周波数約40[kHz]のパルスを送受信回路に出力する。ガードパルス、タイミングパルスは、比較回路の項で述べる事にする。

図.3 ワンショット回路



図.4 タイミングチャート


4、タイマ制御部
 PIT内部のタイマを動かしたり、止めたりする部分である。タイマのカウントはトリガが送られて来てから、受信、又はタイマのオーバーフローが起こるまでの間行われる。この制御はRS−FFで行い、タイマのスタート信号のON/OFF制御をする。
 PIT内蔵のタイマは、設定によりいろいろ選べるが、この回路ではオーバーフローを検出できる「Device.Watchdog」と言うタイマを選んだ。
5、比較回路
 比較回路では主にノイズの除去と回り込み波による影響の無視を行う。受信回路から送られて来た受信波と、基準電圧をコンパレータで比較し、基準電圧より低い電圧の信号を除去する。
 また、回りこみ波の除去については送信してから、一定時間基準電圧のレベルを上げる事で対処する。この時間はタイミングパルスによって決められる。
 この方法は従来の超音波センサ回路に使われているものと同じであるが、この方法では完全に回りこみ波を除去できず、センサ間の距離やホーンの長さを調整して回りこみ波を消していた。しかしこの基板は従来の方法に加えて送信開始から一定時間受信そのものを無視する方法を取り、二重の対策で回りこみ波を除去する事にした。(この結果、新しい問題がおきてしまったが、そのことについては基板評価の項で述べる。)この受信無視時間の長さはワンショット回路から出力されるガードパルスで決定される。
6、基準電圧発生部
 超音波は波の性質を持っているため、スピーカから送信された超音波が、直接マイクで受信されてしまう。このため、障害物からの距離に関係なく、同じタイミングで受信が起きる事になる。回り込み波を受信する時間さえわかっているなら、その間だけ基準電圧を5vに引き上げれば、回り込み波による影響をコンパレータによって、打ち消す事が出来る。この基準電圧発生部は、コンデンサの放電を利用して、タイミングパルスから基準電圧を作り出す部分である。

図.5 超音波の回りこみ


7、マルチプレクサ(MX)
 搭載されている4対のセンサの内、一度に距離計測が出来るのは1対だけである。計測を行うときには4対の内1対を選ばなければならない。
 マルチプレクサは、コネクタを通じて4つの送受信回路と直結しており、PITから送られてくるセンサ選択信号により、使用する1対のセンサを選択する。
 センサにはそれぞれ0から3まで番号がつけられていて、センサ選択信号もそれに対応して00から11迄の2ビットの信号より成り立っている。

PWM回路の説明

1 PWM回路の機能概要
 この回路は、モータを制御する信号であるPWM信号を作り出し、方向データとともに出力する回路である。速度データとカウンタのカウント値との比較によりPWM信号を形成している、この信号のDuty比は、速度データで128段階に変化させている。
2 回路構成
 図1に回路構成図を示す。右速度・方向データは68230のpartAから、左速度・方向データはportBから送られてくる。カウンタのCLKは、68230のToutから得ている。PWM信号発生回路は、カウンタより得られた8ビットのカウント値と7ビットの速度データとの比較によりPWM信号を形成している。PWM信号波形形成原理を図2に示す。Duty比は0%から50%で、これを128段階に分けている。速度データをnとするとPWM信号のパルス幅TとDuty比Dは次式で計算できる。
T[μs]=(n+1)×5[μs]
D[%]=(n+1)/256×100
            0≦n≦127


赤外線センサ回路の説明

1 赤外線センサ回路の機能概要・回路構成
 この回路は、赤外線周辺回路から送られてくるHigh levelもしくはLow levelの信号を処理し信号に変化が起きたときに、割り込み要求信号をMPUに送る機能を持つ。またその時の各受光素子の状態は後述のレジスタを読むことにより得る。I/OSUBボードに搭載されているこの信号処理部は主に周辺回路からの赤外線信号の同期をとる信号同期部と、68230に割り込み要求をする割り込み信号発生部から成る。図1に回路構成図を示す。