沼津高専 電子制御工学科
電子機械設計演習成果

"デュアルレギュレータ電源ボードの開発"
MIRS0604-ELEC-0001
改訂記録
版数 作成日 作成者 承認 改訂内容
A01 2006.7.28 小谷田
初版
A02 2006.7.28 小谷田
デュアルレギュレータ電源ボードの実装図・部品表を追加、回路図を修正

1. 開発目的

駆動側にも制御側と同じようにレギュレータを接続し、電圧を安定化することによってMIRSの誤差を少なくする。

2. 成果報告

1日目
2つのレギュレータを1枚に収めた電源ボードを作るのではなく、まずはレギュレータ部分だけを外付けという形で作った。
レギュレータで安定化させた6Vの電圧でも標準MIRSと同じように問題なく動作するかを先に確かめたかったからである。
基板は機械で切り出したものではなく、ユニバーサル基板を使用した。
回路図と実物の写真を以下に示す。

PD1.gif(115826 byte)
図1:レギュレータボード 回路図

PD1.jpg(139094 byte)
図2:レギュレータボード

2日目
1日目に作成した外付けのレギュレータボードを実装した状態で、MIRS駆動系パラメータの計測と駆動系制御パラメータの導出を行った。
計測した駆動系パラメータを、同じ機体でレギュレータを付けていないときのパラメータ(4班が過去に計測したもの)と合わせて以下に示す。

Table.1:MIRS駆動系パラメータ
記号 名称 レギュレータ有 レギュレータ無
b MIRSの回転中心からタイヤ中心までの距離[m] 0.1225
d MIRSのタイヤの直径[m] 0.065
M MIRSの質量[kg] 4.25
Vmax 駆動系電圧の最大値[V] 5.7 8.0
cv MIRSの直進速度抵抗 22.424 13.382
MIRSの回転速度抵抗 0.2830 0.1782
JM MIRSの慣性モーメント 2.4052×10-2 2.3161×10-2
br 右タイヤ電圧係数 4.4389×10-2 6.5693×10-2
bl 左タイヤ電圧係数 4.4731×10-2 4.8905×10-2
cr 右タイヤ角速度係数 1.8990×10-2 1.1043×10-2
cl 左タイヤ角速度係数 1.8768×10-2 2.0303×10-2
Jr 右タイヤ慣性モーメント 6.5689×10-4 6.6250×10-4
Jl 左タイヤ慣性モーメント 6.6465×10-4 12.1810×10-4
※レギュレータボードの出力電圧は6Vだが、モーターパワー制御ボードで0.3Vほど電圧降下するため、モータの電圧は最大でもこの値ということになる。


3日目
ポスト獲得試験と外付けレギュレータボード基板の切り出しを行った。

ポスト獲得試験では、2つのポストを獲得することはできなかったものの、1つは獲得できた。
動作は標準機と変わらないように見えた。駆動側の電圧を下げたために動作速度が下がる、といったようなことは見られなかった。
駆動側にレギュレータを付けても正常動作するということが言えるだろう。

外付けレギュレータボード基板の切り出しは、2つのレギュレータを1枚に収めた電源ボードの作成に時間がかかりそうだったので、従来の電源ボード+レギュレータボードの2枚でデュアルレギュレータボードの完成形とすることを決め、しっかりしたレギュレータボードを作ろうということで行った。
しかし、諸々の事情により、結局統一的なレギュレータボードの製作を決意。

4日目
2つのレギュレータを1枚に収めた電源ボード基板の基板回路図作成および基板の切り出しを行った。
標準機の電源ボードの基板回路図を基にして作ったのでそれほど時間はかからないはずだったのだが、
グリッドの寸法の間違いから基板を2倍の大きさで作ってしまい、結局この日1日を基板の製作に費やした。

5日目
前日作っておいた基板に部品を実装するという予定であったが、穴が小さくて部品の足が入らなかったり、
穴の間隔が部品の足の間隔と違っていたりと多くの間違いが見つかり、慌てて基板回路図の修正を行った。
基板の切り出しを何とか午前中に終え、午後のプレゼンまでのわずかな時間で部品の実装を行った。
無事正常動作したので、とりあえず今回の目的は果たしたと言えるだろう。

 ※制御側だけです。駆動側は未完成です。

最終的なデュアルレギュレータ電源ボードの回路図、基板回路図、実装図、実物の写真と部品表を以下に示す。

PD2.gif(460614 byte)
図3:デュアルレギュレータ電源ボード 回路図

PD2_CAD.gif(390102 byte)
図4:デュアルレギュレータ電源ボード 基板回路図
PD2_jisso2.gif(631542 byte)
図5:デュアルレギュレータ電源ボード 実装図
(クリックで拡大)
PD2.jpg(164740 byte)
図6:デュアルレギュレータ電源ボード
mirs0604.jpg(202494 byte)
図7:輝く"MIRS0604"の刻印

Table.1 *ボード製造仕様書の部品表
番号 品名 ドキュメント番号/商品名 E/C 数量 単位 備考
IC1,IC2 低損失レギュレータ LT1083CP E 1
C1,C3 積層セラミック・コンデンサ 334 E 1
C2,C4 電解コンデンサ 4.7μF / 25V E 1
R1 抵抗 390Ω E 1
R2 抵抗 620Ω E 1
R3 抵抗 330Ω E 1
R4,R6 抵抗 2kΩ E 1
R5 抵抗 5.6kΩ E 1
VR1 可変抵抗 1kΩ E 1
D4,D5 ダイオード 10D-1相当 E 2
SW1(D1) スイッチ UB-16SKP1R(NKK) E 1
SW2(D2) スイッチ UB-15SKP1M(NKK) E 1
SW11.SW21
スイッチ・ボタン AT-4074C(NKK) E 2
SW22
スイッチ・レンズ(緑) AT-4075M(NKK) E 1
SW12
スイッチ・レンズ(赤) AT-4075R(NKK) E 1
RY1 リレー G5V-2(オムロン) E 1
RY2 リレー G6B-1174P-US(オムロン) E 1
H1,H2 レギュレータ用放熱板 T220R41-25(水谷) E 1
CN1〜CN4 2ピン・コネクタ 53259-0220(MOLEX) E 4
CN5 3ピン・コネクタ 5046-03A(MOLEX) E 1
CN6 2ピン・コネクタ 5046-02A(MOLEX) E 1

3. まとめ

レギュレータで安定化した電圧でもMIRSは正常動作した。
今回製作したデュアルレギュレータ電源ボードをMIRSに搭載すれば、動作性能を損なうことなく、
電池の消耗による誤差を確実に無くすことができるだろう。

他の班、そして後輩たちがこの電源ボードを使ってくれることを願う。


4. 問題点

デュアルレギュレータ電源ボードは、形としては完成し、MIRSに実装して起動することも確認しました。 しかし、今回の目的でもある駆動側は正常動作に至っておりません。
本来ならレギュレータを介して安定化された6Vの電圧が出力されるはずですが、電源電圧が安定化されずにそのまま出てくるか、もしくは2Vしか出力されないという現象が見られました。しかも、この出力電圧はレギュレータに接続された2つの抵抗値の比を変えることによって調整可能なはずですが、抵抗を変えても出力電圧は全く変わりませんでした。

最終日の日報にも書きましたが、この原因として1箇所だけ可能性がある点を見つけました。

PD2_problem.gif(460614 byte)
図8:回路図 問題点

上は問題のある電源ボードの回路図です。赤い矢印で示された3箇所が制御側回路のGND(CN2とCN5の−側)に接続されていますが、この箇所は本来駆動側回路のGND(CN1,CN3の−側)に接続されていなければならないような気がします。したがって、回路を以下のように修正すれば正常動作するものと思われます。

PD2_problem2.gif(460614 byte)
図9:回路図 修正案

基板回路図も、これにあわせて修正が終わっています。

PD2_CAD.gif(6321 byte)
図10:基板回路図 修正前
PD_final.gif(7297 byte)
図11:基板回路図 修正案

後は来週工作室に行って基板加工・部品実装を行うだけです。
問題点がここだけであれば、それで完成となります。