沼津高専 電子制御工学科
MIRS0105 技術調査
赤外線センサ
MIRS0105-TECH-0001
改訂記録
版数
作成日
作成者
承認
改訂内容
A01
2001.12.13
中澤
瀬川
初版


1 目的

赤外線センサの仕組みと特性を調べた上で、MIRS2001で使用する際の検討をする。

2 赤外線及び赤外線センサについて

 

<赤外線>



 ・赤外線の種類は波長によって分類される。

   近赤外(0.7〜3μm)、中赤外(3〜6μm)、遠赤外(6〜15μm)、超遠赤外(15〜1000μm)に分類される。

  ・近赤外線の領域は、赤外線受光素子として汎用になっている半導体のシリコンやゲルマニウムが使用できるため、

   小型の発光ダイオードに用いられている。

   

<赤外線センサ>



 赤外線センサとは

  赤外線センサとは、照射光(MIRSでは赤外線センサLEDにより放射)のフォトン(光子)エネルギーを何らかの形で変換し、

  電気的に扱えるようにするものである。 





  赤外線センサの特徴

 ・人間の視覚を刺激しないでものを見ることができること

 ・対象物の温度を遠くから比接触で瞬時に測定できること

  

 量子型素子

 ・フォトンを吸収しキャリアを励起することによって直接赤外線を検出するセンサ。

  ・熱型センサより100〜1000倍の検出能力を持つ。

  ・しかし、動作温度が低いために通常は液体窒素などで冷却の必要がある。

   よって、MIRSでの使用は不可能である。



 熱型素子

 ・すべての波長において使用できる受光素子。「焦電型」「サーモパイル」「サーミスタ」など。

  ・これらの素子は、赤外線エネルギーを熱として吸収し、それによる温度上昇で表面電荷や熱起電力、

   電気抵抗の変化が現われる現象を利用する。

  ・量子型素子と違って常温での動作が可能だが、感度が低く、焦電型を除いては応答速度が遅いという短所がある。 

  


3 赤外線センサについて


使用素子

 <発光側>赤外線LED TLN105B(東芝)  

   特徴

   ・放射強度(赤外線の届く距離)が大きい

   ・指向特性(赤外線の届く範囲)が広い

    ・光出力の直線性が良く、パルス動作、高周波による変調が可能

赤外線送信機の射程距離及び指向特性
理論値による射程距離及び指向特性は以下の図のようである。

直線送信距離は1.0m、指向角送信距離は0.6mであり、指向性は 60度である。


 <受光側> SHARP   IS1U60 【主な仕様】
2.赤外線受信機の射程距離及び指向特性
理論値による射程距離及び指向特性は以下の図のようである。
 

直線受信距離(Φ=0度)はL=0.2〜5.0m、指向角受信距離はL=0.2〜3.0mであり、 X方向指向性は60度(-30度≧Φ≦30度、θ=0度) Y方向指向性は30度(Φ=0度、 -15度≧θ≦15度)である。
 

  • 発光側の定格及び特性
    1. 外観
    2. LED外観

    3. 最大定格
    4. 最大定格(Ta=25)
      項目 記号定格 単位
      直流順電流IF100mA
      直流順電流低減率(Ta>25℃)ΔIF/℃-1.33mA/℃
      パルス順電流IFP(注)1A
      直流逆電圧VR5V
      許容損失PD150mW
      動作温度Topr-20〜75
      保存温度Tstg-30〜100
       (注)パルス幅≦100μs、繰り返し周波数=100Hz

    5. 電気的特性
    6. 電気的特性(Ta=25℃)
      項目記号測定条件最小標準最大単位
      順電圧VFIF=100mA---1.351.5V
      逆電圧IRVR=5V------10μA
      放射強度IEIF=50mA1220---mW/sr
      光出力POIF=50mA---11---mW
      端子間容量CTVR=0,f=1MHz---20---pF
      ピーク発光波長λPIF=50mA---950---nm
      スペクトル半値幅ΔλIF=50mA---50---nm
      半値角θ1/2IF=50mA---±23.5---°

    7. 波長特性
    8. (標準値、IF=50mA、Ta=25℃において)
      波長特性(グラフ)

    9. 製作における注意
      1. リードフォーミングする時は、リードのストッパ部より先端部分で、素子本体にフォーミングストレスが残らないように曲げ、半田付けはリードフォーミングのあとで実施すること。
      2. 半田付けは、リード線のストッパ部より先端部分で行う。
      3. 半田付けの温度は、260℃以下。時間は5秒以下とする。

  • 受光側の定格及び特性
    1. 1.構成図

      2.絶対最大定格

      項目 記号 定格値 単位
       電源電圧  VCC  0〜6.0  V 
       動作温度  Topr ※1 −10〜60  ℃ 
       保存温度  Tstg  −20〜70  ℃ 
       半田温度  Tsol ※2    260  ℃ 
       ※1 結露してはいけない。 ※2樹脂端面より下部の位置で5秒間以内

      3.推奨動作条件

      項目 記号 動作条件 単位
       電源電圧  VCC  4.7〜5.3  V 

      4.電気的特性

      項目 記号 最小 標準 最大 単位 備考
       消費電流  ICC  −  2.8 4.5  mA  入力光なし、出力端子OPEN
       Hレベル出力電圧  VOH CC−20  −  −  V   ※3、出力端子OPEN
       Lレベル出力電圧  VOL  − 0.45 0.6  V   ※3、プルアップ抵抗2.2kΩ
       Hレベルパルス幅  T1  400  − 800  μs  ※3
       Lレベルパルス幅  T2  400  − 800  μs  ※3
       B.P.F中心周波数 f0  −  38  −  kHz  
       下図に示すバースト波を、送信機にて送信するものとする。
      バースト波

  • 回路構成
  • 赤外線センサ信号回路

    赤外線センサ信号処理回路

    赤外線センサ信号処理回路

    項目 内容(検査方法) AQL(%)
    重欠点 3−4項のVoh、T1、T2の電気的特性不良 0.4
    受光面に電気的特性に影響を与えるような著しい汚れ、キズがないこと。
    軽欠点 直径1mm以上のカケ、気泡及びリードフレームにかかるカケは不良。 1.5
    捺印(2−2項の捺印の判読が可能で所定の位置に行われていること。)



    4 考察


    MILS0105において、赤外線センサは少なくともスイッチを探し当てる為に使われ、さらに白線センサの代わりを務める事も考えられる。それらの事を考慮した上での考察をする。

  • 送信機は白線センサとしてしか使われないのでいいとしても、受信機の指向特性は思ったよりも広いことが分かった。 それはこの場合、探索性能が高いということではなく、誤差が大きいということでしかない。 なんらかの工夫をして、指向性をなるべく直線にし、誤差を少なくしなければならない。 センサを壁で囲み、指向特性を小さくする、というのが現段階で考え付く方法である。 なるべくポストの近くを回るという手段もあるが、危険なのでなるべく避けたい。

  • センサを取り付けるときは、MILSの受信機をポストの送信機とを同じ位置に取り付けることができれば、それが一番射程が長いことになる。 しかし、ポストの周りを円周運動する際に赤外線を受信できればいいので、ある程度は位置を融通させる事ができる。