沼津高専 電子制御工学科
PWM調査報告書
MIRS0101-TECH-0013
改訂記録
版数 作成日 作成者 承認 改訂内容
A01 2001.12.18 伊藤・八木 勝又 初版

目次

  1. PWM制御とは
  2. PWM制御の原理
  3. 実際の回路
  4. OffTimeの逆起電力問題
  5. Duty比  
  6. PWM制御の長所及び短所

  1. PWM制御とは

     PWM(Pulse Width Modulation)とは振幅を一定にしてパルス幅を変化させるパルス制御法の一種(発展形)である。パルスの前縁と後縁の両端を等しく変化させる方法とどちらか一方(普通は後縁)を変化させる方法の2つがある。

  2. PWM制御の原理

      DCモータの場合、図2のようにモータと電源とスイッチをつなぎ、スイッチのON OFFでモータを動かす方法が一般的である。モータのトルク(回転力)は供給電圧の変化(電圧比)で制御される。この方法ではモータのトルクは電源がおちてくればその影響を受けてトルクが弱まってくる。そのため、MIRSのように電源を内部の電池のみにたより、電力消費量が多い自律移動ロボット等にはあまり適さない。

    図1 モータの接続図

     そこでMIRSでは図1のようにモータと電源とスイッチをつなぎ、スイッチのON OFFでモータを動かす方法を使う。電源電圧を一定にして、スイッチの方を連続的に切り替えてみる。すると速度が上がりきる前に電力の供給が止まり、減速しきる前に電力の供給が再開する。ON OFFの間隔を調節すれば、モータのトルクを制御できる。このように慣性を使い、オンパルスの通電幅を変化させることによって、結果的にモータへの供結エネルギーをコントロールする制御を行う。下に簡単な例をに示す。
    PWM PWM
    図2 PWM制御の例(1)

     図2のように電源電圧が5Vにしてモータにスイッチをつけてそれを一定の間隔でON OFFさせてみる。スイッチをONにしたままの時と比較して、モータの速度が落ちるのが予想できる。これがPWM制御の原理である。。図3を見ると、ONの幅が広い時モータが速く回転し、ONの幅が狭い時モータが遅く回転するのがわかる。これはモータ自身に慣性があるため、積分器の働きをし、パルス幅を与えることでアナログで電圧を変化させるのと等価となる。
    PWM PWM  
    図3 PWM制御の例(2)

    ONの幅のことをduty(デューティ)と呼ぶ。

  3. 実際の回路
    図4 実際の回路図


     実際にはスイッチのON OFFではなく、トランジスタで制御している。またMIRSの場合FPGAボードからの入力信号の大きさに応じてPWM信号が形成されている。図4がMIRSのPWM制御の概略図である。回路中にダイオードがあるがこれについては次の「OffTimeの逆起電力問題」で述べる。

  4. OffTimeの逆起電力問題

     PWM制御などのパルス制御法は、電力パルスがonの時だけモータ電流を流していて、電力パルスがoffのときはモータ電流は流れない。したがって、OffTimeとOnTimeではトランジスタ等の負担に差が生じる。
     また、コイルにはインダクタンスがあるため自己誘導作用が発生し、大きな逆起電力を誘発する。これは、制御用トランジスタを破壊するだけでなく、非常に大きな雑音を周囲に巻き散らし、ひいては大きな電磁波被害となる。これを解決したのがダイオードで、一般にこれをフライホイールダイオードと呼んでいる。この働きは、モーターオフ時に誘発する逆方向の電力をダイオードを介して同じモータに回生してやる事である。こうすることによって、高レベルの電気雑音が抑制されるだけでなく、そのエネルギーをオフタイム中、モータに流す事が出来るので、モーター電流が連続的となり、その結果エネルギー効率が上がり、なおかつモーターの動きもスムーズになる。

  5. Duty比

     デューティー比とはキャリア周期に対するオンタイムの比のことである。この比率を変えることによってモータへ供給する平均電流を変化させ、モータの回転数を制御する。
     MIRSの速度をあまり大きくすると、ブレーキをとりつけてないため慣性で進みすぎて壁に激突したり、電力を無駄に消費することにもなる。
    また、Duty比は50%以上になると、回転数の変化が少なくなるので結果的に速度の変化が少なくなる。したがってDuty比は静止状態の0%から最大でも50%、すなわちオンタイムの幅がオフタイムの幅より大きくなることがないように設定してある。
     また、Duty比を1%ごとに制御するとあまり細かく制御できない。そこで0〜50%を前述したように7bit分、つまり128段階にわけて制御することによって、より精密な制御を可能としている。
     速度データをnとするとPWM信号のパルス幅TとDuty比Dの関係は次式である。

    T[μs]=(n+1)×5[μs]

    D[%]=(n+1)/256×100

    0≦n≦127

  6. PWM制御の長所及び短所

    PWM制御の利点として
    1.電力ロスが少ない

    2.発熱が少ない

    3.必要時間のみ通電するので効率がいい

    ことがあげられる。
    また欠点としてオフタイムの逆起電力問題がある。